空の大きさを見よ、心の襞を観よ
ときどき登場してもらい、一喝いただこう。本サイトの運営会社、株式会社コンパス・ポイント代表、髙久多美男氏オリジナルの言葉である。以前もひとつ紹介したことがあった。風流人の彼の手にかかれば、これこのとおり。「見」と「観」の違いがミソである。
街を歩いていると、ふと、以前テレビで見た「クレヨンしんちゃん」のある場面を思い出す。
幼稚園の帰り道だったか、しんちゃんが母親のみさえに話しかけるシーンがあった。
何度話しかけてもみさえは上の空で、しんちゃんの話を聞いていない。
なぜか。
みさえはスマホに夢中だったからだ。
周りを見渡すと、学生も大人たちも、みんなスマホに取り憑かれたように俯いて歩いていた。
「こ、これは……!」
かあちゃんの体がスマホに乗っ取られたと恐怖を覚えたしんちゃんは、幼稚園仲間の「かすかべ防衛隊」のメンバーとともに大人たちをスマホから救おうと立ち上がるのである。
いかがだろう。
子供アニメにまで「スマホ病」が登場してしまうという社会現象。
おそらく小さな子供たちは、しんちゃん同様の心境だろう。
歩きながら俯いてスマホを見る姿は、子供でなくても異様に映る。
何かに憑依されているのか、新興宗教の集まりか。
猫背姿の幽霊が街を歩いているようで恐ろしい。
能楽師の安田登氏によると、短気やキレやすさの原因は「猫背」にあるという。
猫背になると呼吸が浅くなり、体中のエネルギー効率が悪くなって、気力体力が減退し、健康上のトラブルが増えるのだと。
たとえば、サラシなどで胸を締めつけたり、あるいは自分の腕でぎゅっときつく胸を抱きしめると、呼吸が浅く、息苦しくなる。
キレる子供たちは、常にこれと同じ状態で過ごしているのだそうだ。
つまり、猫背の人は酸素を十分に取り込めず、脳が酸欠状態になっている恐れがあるということ。
気が短くなるのも当然だろう。
それはそれとして、
もっと大切なことがあるだろうと、高久氏はいう。
「空の大きさを見よ、心の襞を観よ」
見上げれば、こんなにも空が青いではないか。
深く心の裡を観つめれば、本来の自分と出会えるじゃないかと。
顔を上げて、大空を見よう。
深く深く自分自身と対峙しよう。
どこまでも広がる大空と、どこまでも深まる心の裡は、スマホではつながることのできない、森羅万象、大宇宙の真理とつながっているのだから。
(191208 第599回)