愛とは想像力
97歳にして現役バリバリの尼僧かつ小説家の瀬戸内寂聴さん。酒豪で肉が大好きだという。悩める女子の心強い味方としても大人気。悩み相談に対し裏表のない直球の言葉が受けているようだ。自身の破天荒ぶりを笑いに変え、厳しい中にも愛ある説教を若い世代に伝え続けている。彼女の言動には賛否両論あるだろう。だとしても、愛の本質はこの言葉どおりだと思う。
想像してほしい。
目の前にいる人のことを。
大切な人のことを。
自分を思い、心配してくれる人のことを。
その人を笑顔にするには、どうすればいい?
その人はなにを喜ぶ?
その人が楽しそうにするのはどんなとき?
その人の幸せを願うなら、何ができる?
その人にとって最もいいのは、何をしてあげ、何をしないほうがいいのだろう。
想像してほしい。
この世に生まれてきた瞬間を。
母の血にまみれた赤ん坊の自分を、だれが受け止め、だれがきれいにしてくれたのか。
どんな場所で、どんな人たちが、誕生を見届け、喜んでくれたのか。
今ここに生きているのは偶然じゃない。
たまたま死ななかっただけ。
生きる理由があって生きている。
今ここに生きているのは、いろんな愛のおかげ。
誰かや何かの愛に守られてきたあかし。
その愛に向き合い、応えよう。
特別なことをする必要はない。
生きているだけでじゅうぶん愛されているのだから、こんどは自分から愛せばいい。
「愛というのは、人を喜ばせること。人のために尽くすことです。それには気持ちの先回りをする。相手は今、何を欲しがっているのかを見抜き、そのことをしてあげる。嫌がることはしない。愛とは想像力です」
静かに目を閉じて、想像してみよう。
あの人の笑顔、喜ぶ姿。
きっと、心に変化が起きる。
自分も笑顔になり、幸せな気分になるにちがいない。
それがたぶん「愛」だと思う。
さあ、想像力で愛の扉を開こう。
(200307 第622回)