日本の風土や、季節の美しさが必死で日本を護っている。
シンガーソングライターとして数多くのヒット曲を生み出してきたさだまさしの言葉だ。作家としても活躍している彼の著書『もう愛の唄なんて詠えない』の中にこの一文はある。「日本人の心は壊れつつある」と嘆きながらも、山紫水明のこの国に生まれた者なら、この風土から何かを感じるはずではないかと言外に含む。折々思い出したい言葉である。
世界がパニックに陥っている。
だれも経験したことのない出来事に。
歴史に見ることはできても、それは遠く離れた見知らぬ風景。
「まさかそんなことは…」と、今を生きる者の頭上を通り過ぎる。
その「まさか」が、いま目の前に立ち現れた。
慌てふためく人々の群れ。
心ない人たちの動き。
ひとりの行動が大地を揺るがす。
人以外の生き物には、はたしてどう映っているのだろう。
それでも春はやってきた。
やわらかい陽ざしに小さな生きものたちが目を覚ます。
たよりなげな緑が風にゆれ、すみわたる空を仰いでいる。
花もさいた。
鳥もうたう。
かれらがこの地をまもっている。
かれらがこの星をまもっている。
風土や自然の美しさが、必死でこの世界をまもろうとしている。
日本だけじゃない。
世界中の風土や自然が、この地球を必死でまもろうとしている。
くるくると姿を変えながら。
考える葦である人間ができることは、考えること。
わたしとあなたを考える。
わたしとかれらを考える。
ほんとうに大切なものはなんなのか。
もういちど、じっくり考えてみよう。
今回は、「朧月夜」を紹介。
「おぼおぼ」という擬態語から派生したと言われる「朧(おぼろ)」。ぼんやりと、はっきりしない様子を表しています。続きは……。
(200406 第630回)