アイデアは、苦しんでいる人にのみ与えられている特典である。
HONDA創業者、本田宗一郎の言葉を紹介。世界中に暗雲が垂れ込めている今、行き場をなくした人たちの苦悩の渦が竜巻のように立ち上っているようだ。その渦を止められるのもまた、人の力ではないだろうか。夢へ向かうエネルギーであふれていた本田宗一郎の言葉で、負のエネルギーを蹴散らし、苦悩の渦が消滅してくれることを願う。
―― 国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
有名な川端康成の『雪国』の冒頭は、暗闇の先に広がる光の世界を表しているかに見える。
まるで、母体から生まれ出る赤ん坊が味わう光の世界のような。
アイデアも、おそらくそんなものだろう。
母親が赤ん坊を産み落とす、産みの痛みと苦しみ。
生まれてくる赤ん坊の、産まれ出る痛みと苦しみ。
なにかが生まれるときは、痛みとともに苦しみが伴う。
しかし、
生まれたあとの喜びは、激痛さへも忘れさせる。
病気や、怪我をしたときも、痛みとともに苦しみがある。
それはきっと、快方への通過点。
産みの苦しみと同じように、
痛みや苦しみの先に、生の喜びが待っていることを報せてくれているのかもしれない。
そしてその痛みと苦しみは、出口はもうすぐだというサインでもあるはず。
苦しくなるほど考え抜いて、それでも答えがわからない問いは、
まったく予期しない時に、ふっと答えが降りてくるもの。
お風呂に入っている時や、散歩している時、音楽を聴いているとき、トイレに入っているときなど、体の力が緩んだ時ほどヒラメキは降りる。
とことん悩み考えるという緊張と、力を抜くという弛緩。
その両輪があって、はじめてヒラメキは体を通る。
母体を通り抜けて生まれてくる赤ん坊のように。
産み落とすためには、呼吸を整えること。
まずは呼(は)いて、つぎに吸って。
ゆっくりゆっくり、繰り返す。
心の波が静まれば、目指す目的地にたどり着ける。
痛みと苦しみは、生命力が強い証拠。
生きる可能性がまだまだあるのだと、体が訴えているのだろう。
苦しみという長いトンネルを抜けた先には、白光の世界が広がっている。
今回は、「藤浪」を紹介。
小さな紫の花房が風にたなびいている姿が波を思わせたのでしょう。続きは……。
(200530 第643回)