まいにちまいにちを むだにしないで げんきいっぱいに やってくだされ
ちいさい命を歌いつづけた詩人、まど・みちおが出身校の子供たちに送った手紙の中の一文である。だれよりも子供らしい心をもったまどは、生涯をとおして小さな命の声に耳を傾けていた。彼が耳にした小さな命の歌声は、そのまま大きな地球の歌声として長く愛され歌い続けられている。理学博士、中村桂子の著書『知の発見 「なぜ」を感じる力』から抜粋した。
中村氏の著書にあった、まど・みちおの手紙の全文を紹介しよう。これも一部抜粋だという。
ーー まいにちまいにちを むだにしないで
げんきいっぱいに やってくだされ
(中略)
まいにちが たのしくなって
いよいよ どんなことでも
ほんきで やることが できるようになります
(中略)
それを くりかえしているうちに
みなさんは じぶんのなりたいような おとなになるのです
まだ社会が自然豊かだったころ、子供たちは毎日を元気いっぱいに生きていた。
一日が永遠に思えるほど長く、一瞬一瞬がきらきらと光かがやいていた。
雨の日も晴れの日も、子供たちの瞳はどこまでも深く澄みわたり、清らかな色を宿していた。
今も昔もかわらず、どんな一日も子供たちにとっては不思議でいっぱいの新しい一日。
冒険と発見にドキドキわくわく胸踊る一日なのだ。
やがて子供たちは大きくなって、ドキドキわくわくも少なくなってゆくだろう。
だとしても、子供のころのドキドキわくわくした「げんきいっぱい」な時間は、彼らの命を燃やす火種となるはず。
子供の瞳に映った世界を、大人になって眺めてみれば、ちがった世界が映し出される。
ドキドキわくわくは、ひやひやハラハラに変わるかもしれないけれど、
大人になった自分はあの頃の自分に、ドキドキわくわくの答えを差し出すことも、新しいドキドキわくわくを手にすることもできる。
まどさんのように、
まいにちまいにちを むだにしないで
げんきいっぱい やっていれば。
今回は、「草いきれ」。夏草の生い茂る炎天下では、熱気ととともにむせ返るほど草が香ります。これが「草いきれ」。続きは……。
https://www.umashi-bito.or.jp/column/
(200824 第662回)