命の短いものをつくる人は命が短いことには無頓着だ。
ファッションブランド「mina perhonen(ミナペルホネン)」代表、デザイナーの皆川明氏の言葉だ。「せめて100年つづくブランドに」と、たったひとりで立ち上げたというこのブランド。25年を経た今は100名のスタッフを抱え、全国各地に十数店舗の個性的なショップを展開するまでに成長。それもこれも、流行という短命な「ものづくり」をしてこなかったからに他ならない。皆川氏の人生哲学がつまった著書『生きる はたらく つくる』に、この言葉はある。
今から約6500万年前の白亜紀、巨大隕石の衝突によって恐竜は絶滅した。
その後の環境の変化によって地球上の生物は75%も絶滅したという。
現在はそのスピードをはるかに上回る速さで生物は絶滅している。
1日100種、年間約4万種が絶滅。
これは、年間0.001種だった恐竜時代のおよそ数千万倍のスピードだそうだ。
しかもこの絶滅は、自然淘汰ではない。
あきらかな人的被害によるものである。
その原因は周知のとおり、環境破壊。
地球資源を大量搾取した大量生産、大量消費がもたらした大量廃棄。
昨今のゴミ問題は高度経済成長期の負の遺産だが、その成長を推し進めたものこそ「流行」だったのではないか。
川の流れのように、最初はゆるやかだったモノづくりの流れも、経済という嵐に巻き込まれ、溢れかえったモノの流れは加速した。
激流に押されて大量に流されたモノがいま、大海へ運ばれ太古から連綿とつづく生命の連鎖をも断ち切ろうとしている。
それはとりもなおさず、われわれ人類の種の存続をも脅かしているということ。
子々孫々受け継がれてゆくであろう夢も希望も絶ち消えそうになっているということだ。
「命が短くても、とりあえず売れればいい、という考え方では、いつまでもクオリティを備えた、命の長い、受け継がれるモノにはならない」
モノやスタイル、それを支える考え方が長い命を保つためには、クオリティが必要で、クオリティがあればそれを誰かが受け継ぎ、さらに成長させることができるのだと、皆川氏は言う。
受け継がれるだけのクオリティは、短命なものには与えられない。
命の短いものをつくる人は命が短いことに無頓着で、それでいいと思うから同じことを繰り返すのだと。
ひとつひとつの命は儚い。
しかし、命の流れはこれまでもそうであったように、これからもつづいてゆくだろう。
どんなに小さくても短命と自覚した人間一人ひとりの本質に則った働きは、
連綿とつづく大きな地球を永らえさせる一助になるはずだ。
今回は、「夜振火」。夏の夜、川面に灯りをともすと光に吸いよせられるように魚が集まってきます。この灯火が「夜振火(よぶりび)」です。続きは……。
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(200905 第665回)