愛とは信頼。人を愛するときは完全に信じることよ。
伝説のセックス・シンボル、マリリン・モンローの言葉だ。いまだ謎に包まれたマリリンの死。そこから浮き上がる彼女の私生活。地下鉄の通風孔の上で、まくれあがる白いスカートを抑える姿は衝撃だった。子供のような無邪気なマリリンは、男性にかぎらず女性をも魅了する。言葉どおり彼女は愛のシンボルなのだ。
むかし、とても魅力的な女性がいた。彼女はマリリンに負けず劣らず、男性を魅了する人だった。当然、恋人には事欠かなかった。恋こそがすべてと言わんばかりに、いつも周りに笑顔を振りまいていた。それが嫌味でなかったのは、仕事もできて面倒見も良かったから。もちろん同性にも好かれていた。
あるとき、なぜいつもそんなに幸せそうなのかと彼女に訊ねてみた。
「信じてるから。彼のことも、わたし自身のことも。愛するって、そういうことよ」
彼女は満面の笑みで、そう答えた。
あのときの彼女は、たしかに愛に満ちあふれていた。
もう何年も前のことだけれど、「愛する」ということを思うたびに、あのときの彼女が蘇る。
マリリンの言葉も伴って。
ひるがえって今の世の中を眺めてみたとき、いったい「愛」はどこにあるのかと悲しくなることがある。
完全に信じられるものなど、この世の中にあるのだろうかと。
しかしそれも、もしかすると愛を渇望する気持ちの裏返しではないかと思うと、切なさもひとしおなのである。
どんなに時代が変わっても、人は人を愛し、愛されたいと思うものだ。
自分も他人も愛し、信頼したいと願うだろう。
そうでなければ、このページを開かなかったはずだ。
今回は「玉の緒」を紹介。「玉の緒」とは、いのちのことです。玉は魂をあらわし、緒は肉体と霊魂をしっかりつなぎとめる紐のこと。つまり、心と体がひとつになった生命体が「玉の緒」です。続きは……。
(210513 第719回)