死ぬまでに読むべき300冊の本
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紺碧の将

人のカラダは宇宙の相似形

file.148『いのちの仕組み』石原克己 和器出版

 

 著者のプロフィールを見ると、「医療の根本は、人体が本来持つ自然治癒力を引き出し、治癒の過程を手助けすることにあるという考えのもと、鍼灸・漢方などの伝統医療から科学機器を利用した現代医療に至るまで、多彩な療法に習熟」とある。医療に携わる人のプロフィールとして完璧という以外にない。

 本書でも「医師免許が西洋医学の教育を受けた人にだけ与えられる国家資格として制度化されている」と現代の医療システムに疑問を呈しているが、軸足を東洋医療に置きながら、けっして科学的な療法を否定せず、いいところを取り入れようとする柔軟な姿勢がいい。

 本書の章立てを見ると、

第1章―人は小さな宇宙

第2章―鳥の目で医学を見れば

第3章―病の声に耳を澄ます

第4章―「生まれゆく頃の自分」に会いにいく

第5章―病むことも生きること

 とある。これだけで好奇心を刺激される。

 

 タイトルの「いのちの仕組み」。もちろん本書を読んだからといって、解明できるはずもない。あまりにも宏大で、人智の及ぶところではない。

 しかし、それを知りたいという著者の真摯な思いが伝わってくる。

 一読して、深い共感を覚える。まさしくそうなのだと思うことばかり。別の言い方をすれば、現代人はこの本に書かれていることの反対をしているから病人ばかりになってしまったのだ。そう声を大にして言っても、理解しようとしない人には伝わらないと思うが……。

 こと医療に限らず、現代人の多くはみごとに洗脳されてしまっていると映る。

 本書から少し抜き書きしてみよう。

 

 ――宇宙はその誕生から、たえずバランスをとりながら、脈々と変化、運動してきた。その変化、運動は一度も止まったことがない。つまり、ある秩序を緩やかに保ちながら、変化し続け、運動し続けるもの、それが宇宙の仕組み。いのちの仕組みはそのような宇宙の仕組みの中に生まれた相似的な仕組みですから、地球にも、地球の外側に広がる宇宙と同じように、運動しながら緩やかに秩序を保つ仕組みが働いていて、その働きによってさまざまな現象が生まれていると考えることができる。

 ――人のカラダは、肉体のように見えるものから、こころや精神のように目には形として見えないもの、さらには宇宙とのつながり(月が地球や体にどんな影響を与えているかを考えてみただけでわかります)といったことまでを含んで互いに影響し合う、複雑な仕組みから成り立っている。そう考えるのが、ごく自然なカラダの見方といえるのではないか。

 ――人体の層というのは、肉体のように目に見える層から、こころの働きのように直接は目に見えない層まで、重なり合うように存在している。そして、それぞれが特徴的な性質を持ちながら自律的な働きを示す一方で、他の階層に対してもゆるやかに開き協調するという、ゆらぎを持っているところに、いのちの仕組みがつくりだした生命体の精妙さがあるように思います。

 ――漢方と中医学を比べて、いちばんの違いは、気の捉え方かもしれません。気を太極としてとらえる一元論か、陰陽の気がせめぎあう二元論敵にとらえるか。

 ――この広大な宇宙が138億年という壮大な時間をかけてつないできたいのちの仕組みの一つ、それが私たち一人ひとりのいのちなのですから、そのいのちが終わるときに現れる病の形も、なにかしら意味があること、必要なことだと考えるほうが自然。

 

 ……と、これくらいにしておこう。これを読んでも興味がわかない人は、本書を読んでも仕方がない。時間の無駄だ。

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