どんなに時代が変わろうとも、本が人類の知的財産であることに変わりはありません。
少年の時分より、本を師と仰ぐ髙久 多樂がさまざまなジャンルから独断と偏見で選んだ300冊の本。
本選びの際の参考書として、活用してください。【テキスト/髙久 多樂】
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file.112『パリの王様たち』鹿島茂 文藝春秋
日本では、小説家と言えば、暗い四畳半の部屋でゴホゴホと咳をしながら書いているというようなイメージがあるが、『レ・ミゼラブル』や『ノートルダム・ド・パリ』を書いたヴィクトル・ユゴー、…
file.111『ホテル・ニューハンプシャー』ジョン・アーヴィング 中野圭二訳 新潮社
ジョン・アーヴィングを初めて読んだのは、「マリ・クレール」(日本版)に連載されていた『熊を放つ』(村上春樹訳)であった。着想が大胆で、ストーリーテリングが軽妙、文章がイキイキしてい…
file.110『悪と徳と 岸信介と未完の日本』福田和也 産経新聞出版
福田和也氏の著書は、『昭和天皇』(全8巻)に次いで2冊目。文章は硬直した感があるが、近代において重要な役割を果たした人物の評伝には定評があり、信用に値すると思っている。総理大臣の功…
file.109『にごりえ・たけくらべ』樋口一葉 新潮文庫
ふだん、現代語を当たり前のように使っている身からすれば、読みこなすのにかなりの労力が要る。集中を切らさないのは絶対条件として(少しでも気が緩むと、なにがなんだかわからなくなる)、故…
file.108『手紙、栞を添えて』辻邦生・水村美苗 朝日新聞社
往復書簡で互いの気持ちをこれほど伝え合うことができるものなのか。このままずっと読み続けていたいと何度思ったことか。人選が巧みだ。辻邦生と水村美苗。新聞連載という形でこの企画が始まっ…
file.107『朗読者』ベルンヘルト・シュリンク 新潮文庫
人間だれしも心の裡に、なんらかの劣等感を抱えている。傍目には順風満帆な人でも例外ではないだろう。とりわけ脚光を浴びている人ほど、外からの評価と自分の内側に巣食う劣等感との乖離に戸惑…
file.106『日々是好日』森下典子 新潮文庫
前回に続き、お茶関連の本を(私はまったくお茶を嗜んでいないのに)。良質のエッセイとはこういうものをいうのだろう。読みすすめるうち、気がつくと心がほっこりしている。生きていることその…
file.105『利休にたずねよ』山本兼一 PHP研究所
意表をつく構成が、本書の最大の魅力だ。冒頭で利休が切腹する日を皮切りに、章ごとに時間を遡っていくという構成。作者の用意した道筋に従って利休の生涯を逆方向からたどっていくと、利休の秘…
file.104『雪月花の心』栗田勇 祥伝社
「日本人は留学生もビジネスマンも、海外で自国のことについてスピーチする機会があってもほとんど話すことができない」と聞く機会が多かったことから、「自分もそうかもしれない。それなら自分…
file.103『奥のほそ道』リチャード・フラナガン 渡辺佐智江訳 白水社
これほどの生き地獄に自分が置かれたとしたら、いったいどうしただろう。何度も何度も何度もそう自分に問いかけながら読んだ。もちろん、答えなど出るはずもない。一分の隙もないほど人権を守ら…