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紺碧の将

外から人が来るということ

2021.08.30

 人口を調べると、金沢市は46万人、富山市は41万人。さほどの違いはないが、実際に両市を訪れると、人出の印象はかなり異なる。金沢市の方がずっと多く感じるのだ。当然、活気もある。

 なぜ人出の印象がそれほど異なるのか。市外からの観光客やビジネス客が多いからだろう。金沢駅や香林坊近隣には大きなホテルがいくつもあることが、それを裏づけているともいえる。

 長年、富山県の人は石川県に、特に金沢に劣等感を抱いてきたと聞いたことがある。同じ北陸でも、活気があって洗練された金沢と比べて、富山や新潟は土着のイメージが強い。なぜ、そうなったのかといえば、答えは簡単だ。外から人がやって来ないからだ。

 観光だろうがビジネスだろうが、〝外部の〟人がやってくることによって、独自の価値観や生活文化などさまざまなものが付随してやってくる。その人たちからの視線にもさらされる。外から人の流入が少ないということは、いつも同じ人と会い、異なる文化に触れる機会も少ないということだ。身なりにも気を使わなくなるだろう。やがて、野暮ったくなる。人間はそうできている。

 とはいえ、金沢に地の利があったことも忘れてはならない。奈良や京都と同じように、多くの文化財があったからか、戦時に空襲を免れた。それによって歴史遺産が守られた。それらは観光資源となって多くの人を呼び寄せる。その他ほとんどの地方都市は空襲にさらされ、また歴史遺産の保存より経済振興を選んだところが多く、その結果、外部から人を集める力がなくなってしまった。

 数年前、倉敷市を訪れ、認識を新たにした。中心市街地はシャッター街で人の気配があまりなかったのに、美観地区へ行くと大勢の人で賑わっていたこと。もはや、全国どこにでもあるアーケード商店街など、なんの価値もない。それより、その土地ならではの魅力をいかに育み、発信するか。地方自治体も一般の企業と同様、「なにを目指すのか」「そのためになにを行うのか」「それをどう伝えるのか」という命題が課されている。それを真剣に考えるか否かが、今後の発展の分かれ道になるはずだ。

 

金沢駅前のモニュメント

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

兼六園

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金沢城

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金沢21世紀美術館の通路。『Japanist』で同館の館長だった秋元雄史氏に取材したことがあるが、同館は年間入場者数が全国一だそう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有名な「スイミングプール」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香林坊の武家屋敷

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(210830 第1091回)

 

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