Let it be.
ポール・マッカートニー
ビートルズ最後期の、あまりにも有名な曲のタイトル。
直訳すれば、「その状況(it)をあるがままに(be)させておきなさい(let)」という意味だが、意訳すれば、「なりゆきにまかせなさい」という意味になるだろう。
当時、ビートルズの面々はインド哲学の影響を受けた。特にハマったのはジョージだが、ポールもたっぷり吸収していたようだ。東洋思想の果実が、たった3つの単語に集約されている。お見事! と言う以外ない。
生き物としてこの世に生まれた以上、毎日のように〝どうにもならないこと〟に悩まされる。それを克服してこその〝成長〟なのだろうが、では、やみくもに成長すればいいのか。その結果が環境破壊であり、個々人の精神の不安定であるとしたら、いったいなんのための成長なのかと疑問に思うのも当然のこと。
大切なことは、自分の努力や創意工夫で克服すべきことと、自然のままにまかせておくべきこと、その両者をいかに識別するかということではないだろうか。彼らにとって、その答えのひとつが「ビートルズが分解するにまかせる」ということだったのだ。
ところで、歌詞のなかの”Mother Mary”を聖母マリアと勘違いしている人が多いが、じつはポールの母親のことである。
ポールのご母堂、いいこと言うなあ。
(第79回 211107)
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