Experience is not what happens to you. It is what you do with what happens to you.
オルダス・ハクスリーは、イギリスの作家。数多くの著名な科学者を輩出したハクスリー家の一員で、祖父のトマス・ハクスリーはダーウィンの進化論を支持した生物学者であり、父のレナード・ハクスリーは文芸雑誌を編集していた。
目からウロコが落ちるとはこのことか。なるほどと思わざるを得ない。表掲の英文は、「経験とは、あなたに起こったことではない。起こったことに対してあなたのしたことである」という意味だが、この言葉は「経験」という、よく使われる言葉の本質を突いている。つまり、起こったことに対して、自分が能動的に関与しなければ、経験にはなりえないということ。そう考えると、人生の成否は、経験の多寡に左右されると言って過言ではない。
2場所連続優勝を決めた横綱照ノ富士関が、語っていた。
「下(序二段)に落ちたとき、学んだことがあります。それは心持ちを変えること。そして一日一日を一生懸命生きること」
そんな内容の言葉だった。
大関まで上がった男が、膝の故障によってどん底手前まで落ちた。屈辱以外のなにものでもなかったはず。たいていは、引退を決意しただろう。しかし、彼は心持ちを変えることによって、自分が置かれた状況を変えようとした。膝がガタガタになっても、工夫次第で他の稽古ができる。相撲を取れる歓び、それを胸に、ひたすら無心になって稽古を続けてきたがゆえの盤石の強さである。長い謹慎処分の後、大躍進を遂げた阿炎関にも同じようなことが言えるだろう。
自分の起こった出来事に対し、どのような心持ちで臨むか。それが定まれば、おのずと行動はついてくるはず。
(第82回 211128)
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