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紺碧の将

資本主義のYとK

2022.01.17

 資本主義は、岐路(Y字路)に立っている。

 なぜそういう状況になっているかといえば、暴力的なまでに進行する格差の拡大による。まさにKの字のごとく(Kは格差のKでもあり、字の形のごとく、右肩上がりと右肩下がり、つまり富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなるという状況を表す)。

 これを放置すればどうなるか。雨風をしのぐ場所もない、その日食べるものもないとなれば、人間だれでもヤケクソになる。死んだほうがましだと思う人も増えてくる。どうせ死ぬならだれでもいいから巻き添えにしたい。昨今の巻き添え自殺願望の高まりは、それを如実に表している。

 格差がますます大きくなれば、資本主義よりは、多少不自由でも食べ物を保証してくれる社会制度のほうがいいと思う人が増えるだろう。つまり、社会主義や専制主義を選ぶ人が多くなるということ。中国の香港政策は「世界中が批判している」と思い込んでいる人が多いが、じつは、批判する国より支持する国のほうが多い。政治制度の見方は、それくらい見る人の立場によって変わるのだ。

 18世紀後半、産業革命が起こり、資本主義は富を築くという武器を手にした。一方、資本主義の限界を見抜いた指導者たちが共産主義革命を起こしたが、資本主義よりも格差が進み、それどころか体制に批判的な人や政府にとって都合の悪い人を粛清した。殺された人の数は数千万人に及ぶといわれる。

 ソ連の崩壊によって、資本主義の優位が確かめられたが、昨今の資本主義は自らの首を絞めているとしか思えない。

 NGO「オックスファム」の推計によると、世界の超富裕層2151人の所得が、46億人の所得を上回るという。日本では格差を表すジニ係数が縮小傾向にあるといわれるが、それでも上位1%の保有する資産が全体の10%に相当する。

「どんなに頑張ってもダメに決まってる」

「どうせ、俺は底流だもの」

「世の中、理不尽だらけ」

 そういう風潮が「親ガチャ」「子ガチャ」「上司ガチャ」というあきらめの観念を生んでいる。また、マルクスの『資本論』を礼賛する人が目についてきたのも、その一環だろう。

 岸田首相が「新しい資本主義」を掲げたのは的を射ている。あとは、それをどう実行するか、だ。

 言うは易く行うは難し。国境を超えて人や企業が移動するグローバル社会化が進んだ現在、やみくもに再分配に舵を切れば、富を生み出す人や企業はさっさと条件のいい国へ移り、富を生み出せない人が残るという皮肉な結果になるのは目に見えている。

 まさしく資本主義は岐路に立っている。

(220117 第1111回)

 

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