震災イチョウの背筋
2022.12.19
皇居の平川門近く、和気清麻呂像の前に、半身をむき出しに立つイチョウが立っている。周囲に高い樹木はなく、通りを隔てた反対側には気象庁や東京消防庁の建物がある。
この木は、関東大震災の生き残りである。
近くに立つ案内板にはこう書かれている。
震災イチョウ
このイチョウは、かつて一ツ橋一丁目一番一帯にあった文部省の構内(現在のパレスホテル付近)にありました。1928年(大正12年)の関東大震災でこの地域一帯は焼け野原になりましたが、イチョウは奇跡的に生き残りました。
しかし、帝都復興計画による区画整理事業の中で切り倒されることになりました。それを聞いた当時の中央気象台長の岡田武松が惜しみ、帝都復興局長官の清野長太郎に樹木の保存を申し入れたところ、長官もその意義を理解しこの地に移植され、現在にまで残っています。
広島原爆を受けても死ななかった木や東日本大震災の津波で生き残った一本松にも言えることだが、天災を奇跡的に生き延びた植物には独特のオーラがある。このイチョウも同様だ。
見ているだけで痛々しいが、それでも背筋を伸ばして立っている。その姿は神々しいばかり。
こういう木に会うと、元気をもらえる。
(221219 第1159回)
髙久の最新の電子書籍
本サイトの髙久の連載記事