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紺碧の将

三輪龍氣生と陶芸パンク

2024.10.19

 前回に続いて陶芸の話題を。

 日本橋三越で開催されている「三輪龍氣生 生盌展」を見てきた。

 三輪氏といえば、元十二代三輪休雪であり、『Japanist』第39号でご紹介した。

 6年ぶりの再会だが、ある程度予想していたとはいえ、ぶっ飛んだ。御年84歳。老境などというものは一片ほども感じさせない。永遠のロックンロール・アーティストである。

 会場で交わした会話の一部。

「よく陶器というでしょう? 僕は器という考え方を否定はしませんが、あまり好きではないんです。この場合の器は、千利休の孫が確立した茶道をベースにした家元制度に則っているということで、それ以外は許されないんです。家元制度はいわば巨大な上納システムで、世界で日本にしかありません。僕はね、その枠内におさまる器をつくるつもりはありません。陶芸を自立させたいんです」

 だから、はじめから機能性を排除した大胆な潔さにあふれている。

「飲みやすい器とか手に馴染む器とか言うでしょう? そんなのっぺりしたもので茶を喫しても記憶に残らないですよ。僕がつくるものは大怪我をするかもしれないようなギザギザが何本もあったり、両手で持ってもかなり重い。でも、それだからこそ、用心して飲み終えた後は印象に残る」

 今回展示する作品を三輪氏は生盌(しょうわん)と名づけた。命が果てるかもしれない出陣に際し、戦国武将たちが喫したであろう覚悟の一服を思い、創作したという。

「パンクですね」と言うと、アハハと笑い、

「僕の作品をパンクと言ったのはあなただけですよ」と返された。もちろん、チープという意味ではない。型破りに対して述べたのである。

 余談ながら、三輪氏は拙著『紺碧の将』を読んでいただいている最中である。何度も「あれ、すごく面白いですよ」と言っていただいた。彼のような〝永遠の青年〟に楽しんでもらえるだけで書いた甲斐があるというもの。

 20歳ほども歳上の人から大いに刺激を受けたのであった。

 

個展会場の入口に展示されている『豊饒の視志』。これって作者の自画像?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自作の書と『飛翔の視志』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

展示・販売されている生盌のひとつ。たしかにこれで茶を喫すのは困難であろう。ひとつ330万円。かなりの数が売約済みになっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(241019 第1242回)

 

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