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紺碧の将

日本人の良き特質

2013.01.05

昭和記念公園 日本の行く末が心配でもあり楽しみでもある。

 心配のタネは今さら書く必要もないくらい巷で語られているので省略するが、「楽しみ」とは、何をもってそう思うのかと訝る人も多いだろう。

 弊社が発行している『Japanist』は、世の中にとっていい情報を提供しようという編集主旨である。さまざまなジャンルで活動する「良きお手本」「オモシロイ人たち」などを深く掘り下げて紹介することで社会に波及効果を生みたい、という「感化装置」たらんとしている。併せて、この国の特質を知るための記事を掲載し、日本人としての誇りを醸成しようということも重要な編集方針である。

 さて、そういう方針のもと、取材先の情報収集をしているわけだが、「世の中にはスゴイ人がいるものだ」と感嘆するケースがじつに多い。いや、「スゴイ」というのは語弊があるかもしれない。そういう人はどの国にもいるから。

 あえていえば、「こういうタイプの人は日本以外には滅多にいないだろうな」と思わせてくれる人がいるのだ。少なくとも、お隣のチャイナにはいないだろうと思わせてくれるような人が。

 では、どういう人か。

 簡潔に列挙するなら、「利己より利他」「自然に対する敏感な感性」「お金より自分の信念を大切にする」といったところか。

 今月発行予定の第16号の巻頭対談で出演していただいた西水美恵子さんは、世界から日本を見て、「利潤追求だけではなく、社員や地域社会のことを真剣に考えている企業が日本には多い。大企業には皆無だが、中小企業に多く、そういう会社は日本以外にはない」と断言されていたが、要するにそういう人や会社が多いということ。

 利己より利他という精神は、儒学のエッセンスが日本人のDNAに息づいているからであろうし、自然との共生感覚は平安時代以来の歌詠みのDNAが受け継がれているからにほかならない。なにしろ『新古今和歌集』には天皇から乞食まで、さまざまな階層の人たちが詠んだ歌が収められているし、幕末に日本を訪れたヨーロッパ人は、自国では詩人以外に自然の移り変わりを詩に詠むなどということは考えられないが、日本では市井の人々も詩を詠んでいると驚嘆していた。また、お金より誇りを大切にし、恥のない生き方を優先するというのは武士の精神が現代にも息づいているということだろう。

 つまり、われわれは歴史にどう向き合うかにかかわらず、大きな影響を受けているということでもある。

 その結果、われわれ日本人は祖先たちからじつに多くの宝物を受け継いだ。目には見えないが、とても価値のある宝物を。

 いよいよ、そういうものを発揮する時代が到来したということだ。

 ただ、残念なことは、格差があまりにも開いてしまい、そういうプラスの精神的遺産を活用できる人と、それらを活用できずに限りなく墜ちていく人とに二分されている感がある。

 それに歯止めをかけるための根本的な対策は、憲法改正と教育改革だと思っている。そういう意味でも、安倍さんがやろうとしていることは正鵠を射ている。

 一方、金融緩和、インフレターゲットはどのような副作用が出るのだろう。一抹の不安があると同時に興味深くもある。

 

 傾きて本より出ずる日輪の 空にとどむる手を合わせばや

(地平線から昇った太陽も心なしか傾いているような気がする。墜ちてこないよう、みんなで手を合わせようではないか)

(130105 第392回 写真は、立川市の昭和記念公園の風景)

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