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紺碧の将

大きな銀杏の木の下で、あなたと私

2008.01.27

 私がどうして歴史に興味をもったかと言えば、小学6年の時の先生の話があまりにも面白かったから。その先生は教科書そっちのけで、源平合戦の逸話などを臨場感たっぷりに語って聞かせてくれた。当時の高久少年は目を皿のようにして聞き、ワクワクドキドキしていた。

 そんな風にして聞いた数多いエピソードの中で、源実朝が鶴岡八幡宮で暗殺されたくだりは強烈に私の脳裏に刻まれることとなった。

 雪の降るある日、鎌倉幕府3代将軍源実朝が階段を降りてくる。階段の下の方にある大きな銀杏の木の陰に隠れているのは、2代将軍源頼家の子・公暁。実朝が近くに来るや、さっと姿を現し、実朝に切りかかったのであった。

 実朝を殺せば、次はあなたが将軍になれると北条氏に入れ知恵されて及んだ暗殺だったが、もちろん公暁もその場であっという間に骸となった。

 そのシーンを、まるで劇画タッチで詳しく聞かせてくれたのだ。

 真っ赤に染まる雪の階段、700年以上前でも姿を隠すことのできた大きな銀杏の木など、まるでその場に居合わせたかのようにリアルな光景が、私の脳裏に浮かんだ。

 それからほどなくして訪れた修学旅行は、江ノ島・鎌倉。それを見越して、鶴岡八幡宮での暗殺事件を教えてくれたのであろうか。だから、なにより興味を抱いたのは、公暁が隠れていたと言われる銀杏の木だった。

 実際に、その木の陰から八幡宮の階段を見上げた。ここで公暁はどんなことを考えていたのだろう。やっぱりバカは悪者に利用されるだけなんだなーなどと思ったのを、ついこの間のことのように思い出す。

 歴史って、選りすぐった映画のようだ。そう思ったのはその時が最初。それからは、司馬遼太郎などの歴史小説を読みあさった。おかげで、日本史の大きな流れは中学生の頃につかんだと思う。

 そんな私だが、歴史の年号はほとんど覚えていない。中田宏氏の著書にもあったが、資料を見ればかわることをあえてたくさん覚える必要などないと思う。歴史には年号よりも数百倍大切なことが含まれているのだから。

 結局、どんな教科でもそうだが、先生の役割はことのほか大きい。そう言えば、小学5年の時の担任は大学を出たばかりの新任教師だったが、こともあろうに通常の授業をつぶしてクラス全員で視聴覚室に移動し、カシアス・クレイ(後のモハメッド・アリ)対ジョー・フレージャーの実況中継を見せてくれたのである。それ以来、ボクシングの世界タイトルマッチに興味を持ったことは言うまでもない。当時のお金で、リングサイドが36万円と聞いて、ぶったまげたことも覚えている。

 大らかだったなあ、あの頃は。今、クラス全員でヘビー級のタイトルマッチを見ていました、などとわかってしまったら、愚かな母親どもが血相を変えて学校へ抗議に行くにちがいない。

(080127 第32回 写真は鶴岡八幡宮の大銀杏 )

 

 

 

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