日本人の底力
やっぱり、日本人はスゴイ!
そう思わせてくれる人たちに次々と会っている。
今回紹介するのは、世界で初めて超小型人工衛星を開発し、実用化させたアクセルスペースの中村友哉(ゆうや)氏と世界で初めてアナログレコードをレーザーで再生する技術を実用化させたエルプの千葉三樹(さんじゅ)氏。いずれもまだまだ小規模ながら、世界で勝負できる、とんがった存在だ。
中村氏は東大時代、「学生が打ち上げる人工衛星」というテーマに興味をもったことがきっかけで超小型人工衛星の実用化に取り組むようになった。そして、それまでの小型衛星の100分の1程度で打ち上げられる超小型衛星を開発した。現在、なんと34歳! この技術、世界の宇宙産業界を塗り替えることになるかもしれない。
「宇宙のロマンとかいって、宇宙を特別視するのは好きじゃない」とさらりと言い切る。つまり、科学は実際に社会の役にたってナンボと割り切っているのだ。爽快なリアリストである。
一方、千葉氏は自費で学費を捻出するためにまず自衛隊に入隊。そこで苦手の英語を克服し、除隊後、大学に入学。その後、GE(ジェネラル・エレクトリック)に入り、副社長にまで登りつめる。ある日、事業再建を任されていた会社の処遇をめぐり、いきなりジャック・ウェルチ会長に日本語で「バカヤロー」と怒鳴って退社する。
帰国後、さまざまな経緯から、レーザーによってアナログディスクを再現するプレーヤーの開発に挑む。銀行の融資は得られず、家屋敷や奥さんの財産まで売り払って資金を捻出し、ついに実用化に成功した。費やした資金は10億円というから、その執念たるやスゴイを通り越して、凄まじいというばかり。
超小型人工衛星もレーザーターンテーブルも名だたる大企業が取り組まなかったことが何かを暗示している。つまり、今の日本の大企業は、硬直化している証かもしれないということ。
個人で未踏の荒野を目指すサムライがあちこちで台頭してきた。
いずれの記事も担当は関口暁子女史。4月25日、刊行の予定。
(140307 第491回 写真上は超小型人工衛星の実寸大模型。下はアナログレコードを再生するレーザーターンテーブル)