花の乱舞
つぎつぎと花が春の到来を告げている。
この季節の主役は、もちろん桜だ。あのごつごつした幹と艶やかな花のアンバランスが絶妙だ。
相変わらず新宿御苑を2日に1回走っているが、桜が散るのは紙吹雪が舞っているかのよう。幻想的だ。体の芯から、いや心の奥から歓びの渦が湧き上がってくる。
千鳥ヶ淵のような晴れ舞台もいいが、名もない山の中腹に咲く山桜もいい。いつもは黙っているのに、この季節だけ、「ほら、ここにいるよ」と教えてくれる。
桜よりひとあし早く咲くハクモクレンも素敵だ。楚々としているのに存在感がある。青空を背景に白い花が咲き乱れているのを見ると、だれかがつくった巧妙な映像ではないかとさえ思う。
川沿いの土手などに咲く菜の花もいい。黄色い絨毯が敷かれたようで、見ているだけで心が浮き立ってくる。黄色はそういう効果があるのだろう。以前乗っていたクーペ・フィアットという車は、運転席の前に幅10センチほどの黄色いラインが走っていて、乗り込むたびに心が弾んだものだ。
忘れてはいけないのは、だれも歩かないような薄暗い道にひっそりと咲く赤い椿だ。ふと目が合うと、ドキドキする。妖艶なのだ。昔から椿ファンは多いが、風通しのいいところより、空気がもったりとしているところの方が合うと思う。
ボケ、シャガ、ハナニラ……。あげていけば、きりがない。
当分の間、創造主からの恩賜に目が離せない。
(160407 第628回 写真上はハクモクレン、下はしだれ桜。いずれも新宿御苑)