醜い電柱・電線と無残な剪定になにも感じない人たちへ
小池知事に期待していることがある。
都内の電柱埋設工事を速やかに進めてほしいということ。彼女は以前より、景観や防災の観点から電柱の地下埋設を主張していたが、とても素晴らしい視点だと思う。
日本人の多くは電柱や電線があるのは当たり前だと思っているようだが、欧米のほとんどの都市では電柱や電線を見ることはできない。見上げれば、美しい空が広がっている。
かねがね思っていた。どうして日本ではこんなに電柱がむき出しなのかと。
いつ、どのデータから引っ張ったか記録がないが、日本には3500万本以上の電柱があり、毎年7万本ずつ増えている。3500本ではなく3500万本である。人口割りにして、3.5人に1本の電柱を抱えていることになる。
1986年、国は「電線類地中化計画」をスタートさせ、幹線道路を中心に地中化を進めてきた。ところが、計画を立ち上げた当時は3000万本ほどだった電柱が、500万本も増加している。国民の関心が低いから、こういう結果になっているのだ。
では、海外ではどうか。ロンドン、パリでは戦前から無電柱化に取り組み、無電柱化率100%を実現している。ベルリンは90%、ニューヨークは83%達成している。日本より遅れていると思われがちなアジア諸国はどうだろうか。ソウルは80年代の17%から46%へ、北京は34%、マニラ(マカティ地区)40%、ジャカルタ(コタ駅周辺)35%、シンガポールは93%、香港は100%と、無電柱化が着々と進んでいるのだ。
それに比べて、日本は東京23区で7%、大阪5%、世界的観光都市の京都でさえ2%という現実である。地方都市に至っては、数字にもならないだろう。これで「美しい日本」を標榜しようというのだから、無理難題にもほどがある。
汚い風景を見てなんとも思わなくなった代償は、いろいろある。街路樹の異常な剪定や伐採などの野蛮な行為がまかり通っているのもそのためだ。
私は日常的に新宿御苑を走っているが、前方から歩いてくる人を見ながら思う。いちばん姿勢が悪いのは日本人だと。横に振れたり、前屈みになったりと体幹がブラブラしている。それも遠因は汚い風景を見て、そう思わない鈍感な感性に発していると思っている。
「日本人の感性と姿勢を美しくする計画」を遂行しようと思えば、具体的にどういう方法がいいのだろう?
(161206 第684回 写真は汚い電柱と電線、〝落ち葉対策〟と称されて無残にも紅葉する前に枝を切り落とされた街路樹)