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紺碧の将

8年間の成果

2017.01.23

No.32 表紙&表4 2009年4月に創刊した『Japanist』。今回の32号をもって丸8年となった。創刊後、1年を経ずして消えていく雑誌が多い中、よくもまあ続いているものだと自分でも思う。

 先日、ある人と話をしていて、不遜にも私はこう言った。
「この雑誌の定期購読者で、2年、3年分を前もって払ってくれている人がけっこういますが、私ならそんなことしませんね」
 そうなのだ。本誌の定期購読者は絶対数は少ないものの、長期で申し込んでくれている人が多いのだ。
 これはなにを意味するのか? 廃刊することはないだろうと思っているのか、あるいはどこから見ても儲かりそうもないから応援してあげようと思ってくれているのか。いずれにしても、ありがたい限りである。

 今号の表紙を飾っているのは、「ジャパニストの美術散歩」でも紹介している漆作家の松崎融氏の作品。通常、漆の作品といえば、工業製品のように寸分狂いのない、正確な寸法と形をしているが、松崎氏の作品はどこか雄渾で、使う者の思いを受け入れる余地がある。つまり、大きさも形も不均一だ。このスタイルを構築するのは容易ではなかったはずだ。
 ——土のような質感。頑丈な刷毛の痕。ごつごつとした骨骼。浮き上がる木目。男性的で力強い魅力を湛えた漆器の数々。新しいのに、まるで使い古されたかのようにも見える。根来かと思いきや、そうではない。
 記事はこのような文章で始まる。
 なんといっても松崎氏の特徴は、川上から川下まですべてを行っていること。大きな倉庫で多くの木材を寝かせ、下地を乾かしている。だから、一つの作品が仕上がるまでに、およそ一年かかる。木と対話をしながら、ひとつずつ、木の個性に合わせた作品をつくっているのだ。
 本ブログでも紹介したことがあるが、巻頭対談には、禅僧で芥川賞作家・玄侑宗久氏に登場していただいた。若い時分から社会に飛び出し、さまざまな宗教の門を叩き、さまざまな職業を経験したことによって、氏の〝懐〟は格段に深くなったのだろう。見識の深さはもちろん、どこから飛び出してくるかわからない多彩な話題も魅力だ。
「じぶん創造物語」では、営業を天分と自覚し、アメリカを拠点に世界を股にかけて活躍する山下政治氏を取材。「楽しくて、楽しくて……」と笑顔が絶えない彼は、〝人生の達人〟でもある。
 新しい企画は國武忠彦氏の歴史的人物掘り起こし。
「なにものにも媚びず、へつらわず」をモットーに、個性的な誌面づくりに徹している。興味がある人は、ぜひ!
(170123 第695回)

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