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紺碧の将

ニッポン放送の破裂談

2008.12.15

 中田宏氏がDJを務める「ドリームランナー」というニッポン放送の番組に、『fooga』12月号で紹介した炭焼き師の原伸介さんを紹介したので、収録に立ち会った。ちなみに、その「ドリームランナー」という番組は『fooga』のラジオ版ともいうべきコンセプトで、さまざまな分野で頑張っている30代から40代の人をゲストに招き、一人30分×2週連続放送という形で紹介している。

 中田と原、まさにサムライ同志の対談なので、会った瞬間から2人は意気投合。しかも、中田さんがほとんど喋らずに原伸介だけが猛烈な勢いで喋っていた。先月も立ち会ったが、こんな風ではなかった。今回の伸介のトークはまるでマシンガンのようで、さすがの中田さんも「こんな楽な収録はない」と感嘆しきり。職人と言えば、ほとんどが判で押したように無口・武骨だが、伸介は颯爽とした着物姿であか抜けているので、どう見ても職人には見えない。そのギャップが女の人にモテるコツだとわかっているあたり、かなりの軽業師だと見た。炭焼きは軽業ではないが、伸介は軽業師。いいな、これ……。

 ところで、収録に際して憤慨したことがある。いわゆる放送禁止用語というヤツだ。なんと「きこり」という言葉は使えないという。おまけに「土方」も「百姓」もダメ。

 では、きこりと言わず、何と言うか? 答えは「林業従事者」。これじゃ、間口が広すぎてはっきり伝わらない。第一、ニュアンスも伝わらない。中田さんも伸介も、そして私も憤慨した。「こういうことはいったい誰が決めたの? そもそもそういう職業の人たちに対して失礼じゃないか。そういう職業に対して差別意識をもっているから、それらの呼称に違和感を覚えるんじゃないの!」と憤慨しまくっていた。伸介などは「意地でもきこりと言いたい」と地団駄踏んでいたが結局、言えず終いだった。あれでは体に悪いだろう。

 今のニッポン、言葉から直さないとダメだ。本当の思いやりはないくせに、かたっぱしから差別用語を指定して、それで済んだ気になっている。あからさまに身体的な欠陥を言葉にするのは良くないと思うが、ほとんどの人がごく自然に使っている言葉を使わせないというのは、むしろ差別意識を助長させるだけじゃないか。

 まあ、それはさておき、たまらなく愉しいひとときを過ごしたことだけはまちがいない。翌日、伸介は前の晩のことを思い出し、原じゃなく腹を抱えて笑いながら松本へ帰って行ったのであった。

(081215 第80回 写真はラジオ収録中の中田宏氏と原伸介氏)

 

 

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