着物デビュー
ついに着物を買ってしまった。
『fooga』2月号の特集は着物スタイリスト・石田節子さんを取り上げるが、石田さんが経営する銀座の店舗での取材を終えた後、これも何かの縁と思い、一揃いをコーディネートしていただいた。右の写真は羽織だが、羽織裏は鳥獣戯画のデザインである。
最近、友人と日本の文化や歴史について語り合う時間が増えたが、最後には決まって、「われわれも日本人なんだから着物を着ないとね」で落ち着く。
しかし、私は着物を持っていない。御多分にもれず、あまり興味がなかったからだ。
ところが、最近炭焼き師の原伸介さんと会う機会が増えたり、雑誌などで和装の男の写真を見る機会が増えたり、ジワジワと「着物包囲網」に巻かれていたのであった。そこへもってきて石田さんとのご縁があり、一気に「陥落」してしまったのである。
さて、仕立て上がった私の着物は、まだ畳まれたままだ。着付け教室できちんと着方を教えてもらわないと自分では着られないのである。
今年は『Japanist』を発行するわけだし、まず自分がJapanistにならなければならないと思っている。だから、週に一度くらいは着物で仕事に出かけたい。たぶん、気持ちの張りがちがうんだろうな。仕事の質も変わるかもしれない。気が漲るというか……。仕事ばかりではない。遊びも楽しくなりそうだ。着物を着て屋根を開けたアルファロメオに乗るのはどんな気分だろうと今からワクワクしている。まあ、いずれにしても変わり者のそしりは免れないだろうが、それは子ども時分から味わっていたこと。
そう言えば、トンビコートも買ってしまった。中原中也などが着ていた “アレ” である。着物の上にトンビコートを羽織れば、いやおうなしに文士気分だ。世間がとんでもなく暗いのだから、とんでもなく肯定的にいきたいと思っている。
(090104 第82回)