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紺碧の将

武装化した情報

2019.03.03

 来る日も来る日も、大洪水のように情報が押し寄せてくる。このブログも情報のひとつにはちがいないが、私がいう情報は、もっと戦略的・戦術的で作為的なものだ。

 その多くは「どうにかして、これを売りつけよう」という類だ。たとえば、電車には美容サロンの広告が溢れているが(若い女性がたくさん乗っているから)、「今月だけ99%オフ」とか「ただ今、期間限定で10円キャンペーン」などというコピーが踊っている。

 まともな判断力があれば、それがまやかしだということはわかる。だって、その仕事をする従業員の時給はいくらなの? と訊きたくなる。そのポスターを作る経費は? 掲示する料金は? と。格安で釣って、あとは〝営業攻め〟が待ち受けているだろう。

 BS放送を見ると、中高年向けにサプリメントを売りつけようとするコマーシャルが氾濫している。「○○が足りない」「一粒で○○mgの栄養が採れる」「血圧130を超えたらこれを飲むといい」とか……。メリットばかりを謳うが、それを服用したことによるデメリットはまったく伏せている。私の経験でいえば、日常的にサプリメントをたくさん飲んでいる人で健康そうな人に会ったことがない。そりゃあそうだろう。あの錠剤がいかに不自然か、どんな方法を使って固めているのか、なにを使っているのか、それらを知るだけで呆然とする。

 AIを使ったマーケティングがどんどん進化し、情報の武装化はますます巧妙になるだろう。これだけ多くの人が〝かぶりつき〟で情報を得ようとすれば、フェイクニュースはいとも簡単に拡散する。そうなれば、どんな重要な法案も意のままに操ることができる。電車に乗るとわかるが、対面の椅子に座っている7人全員が同じような姿勢でスマホにかぶりつきになっていることがよくある。つり革を手に、同じような姿勢で立っている人も。まるで新興宗教の団体に紛れ込んだような気がして、ぞっとする。人を騙すのは簡単なのだ。

 私は、まず斜に構える。これは若い頃からの習性である。頼んでもいないのに向こうからやってくる情報はなんらかの作為があると思っている。だから、まずは「疑う」ことをする。それ以前に、情報の取捨選択をする。情報を厳選するのだ。もちろん、暗い話題ばかりのテレビのニュースは見ない。

 現代において、いかに武装化した情報に対峙するか、これはきわめて重要な知的能力といえる。

 本来であれば、こういうことは個人の自由である。しかし、こうまで武装化した情報に無防備な人が増えると、フェイクニュースが蔓延するなど、社会的な弊害も大きくなる。

 と、警鐘を鳴らしているつもりだが、「あれこれ言っても、無理だろうなあ」とあきらめているのが事実である。

(190303 第882回)

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