風呂で西行を詠む
2010.02.05
次々と便利なものが現れてくるものである。
水に濡れても破れない合成樹脂で作られた本がある。私が買い求めたのは、『お風呂で読む西行』。そのおかげで、最近は風呂の中で西行を朗読している。
風呂のなかは独特の音響効果があるので、朗々と聞こえる。いつもの自分の声とはちがう。歌の意味を探らず、まずは声に出して何度も詠む。西行はなぜか字余りが多いが、それが妙に印象に残る。言葉も流れるように美しい、とは言い難い。しかし、ズシリと響く力をもっている。やはりこの人は武士である。
10数篇を何度か詠み終えた後、おもむろに浴槽を出ると、身も心もスッキリ。西行の言葉のリズムが耳の奧から五臓六腑に浸透しているかのような錯覚を覚える。
いいな、選び抜かれた言葉の力って。
『Japanist』で連載している「日本人偉人列伝」は、大久保利通、小村寿太郎と明治の傑物が続いたので、次回は一気に時代を遡り、西行を書きたいと思っている。
なんと言っても、「願はくば花の下にて春死なん そのきさらぎの望月のころ」という歌と出会い、4月生まれの自分もこのように最期を迎えたいものだと思って以来の西行好きである。
(100205 第148 風呂で西行を詠むの図)