There is strong shadow where there is much light.
ドイツの詩人、小説家ゲーテの言葉。直訳すれば「光が多いところは影も強くなる」。
えてして人は、ものごとの表面だけを見て判断してしまうが、その裏には光の強さと同様の影があるということ。一般的には、成功の影には血のにじむような努力があるなどと解釈される場合が多いが、はたしてゲーテはそれだけを言いたかったのだろうか。
最近、名の知られた芸能人や俳優が自殺するケースが相次いでいるが、市井の人たちからすれば、あれほど華やかな人生をおくっている人がなぜ? と思う。スポットライトを浴びるほどその人は輝き、ネガティブなことなど想像もできなくなる。
しかし、実態はどうなのだろう。影の部分が濃いほど、見た目の華やかさとのギャップが広がり、呻吟しているかもしれない。やがて、それが臨界点を越えたとき……。
若い時分、たまたま成功してしまったスポーツ選手や芸能人が、その後、没落していくケースは無数にある。竹馬のような上げ底の靴を履いているのだから、転びやすいのは明白。
それよりも、少しずつ少しずつ実力を蓄え、自分の身丈に合った生き方を選択する。外見と実力がほぼ一致していれば、精神状態は安定するはずだ。
ここでもこう言う以外にない。すぐに得たものはすぐに失われる、と。
(第28回 201119)
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