Success has ruined many a man.
「成功が多くの人をだめにする」とは、慧眼であろう。人間が陥りやすい穴をこれほど的確に、たった6つの単語で表現したベンジャミン・フランクリンの洞察力に感嘆する。
並々ならぬ努力があったからこその成功。しかし、この成功が曲者なのだ。人は〝ちょっとした〟成功によって、それまでに得たものを帳消しにするくらい、簡単に没落してしまう。
そういう事例をいくつも見てきた。わかりやすいのは、ビジネスの世界だ。
事業を起こし、無我夢中になって取り組み、やがて目標の株式上場を果たし、莫大な創業者利得を手にする。この国で大金持ちになるには、これが最も手っ取り早い。
ところが、そのあとがいけない。本来、株式の上場は次へのステップへ至る一里塚のはず。しかし、そこが終着点になってしまう。上場と同時に、社会的責任も飛躍的に大きくなる。私企業から公の企業になるというのはそういうことなのだ。ところが、自分は成功者だと勘違いし、謙虚さを失う。周りに集まるのは良からぬ企みを胸に秘めた有象無象。いとも簡単にしゃぶり尽くされる。気がついたときは、身も心もスカスカ。周りに真の友人は誰ひとりいない。そんな事例を少なからず見てきた。
ベンジャミン・フランクリンのこの言葉を頭の片隅に入れておけば、少しはちがう結果になっていたのに……。
(第31回 201213)
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