A good story cannot be devised, it has to be distilled.
レイモンド・チャンドラー
チャンドラーといえば、ハードボイルド小説の代名詞のような存在。彼の作品に登場する人物のセリフは、いちいちカッコいい。
今回紹介する言葉もそう。
「いい物語はひねり出すものではない。蒸留により生み出されるものだ」
世の中に出たがっていない物語を無理やり生み出すのではなく、長い時間をかけてエッセンスが蒸留されるような物語でなければいけないと言っているのだ。
これは単に小説作法だけではなく、すべてにあてはまる。
チャンドラーが言う「ひねり出す」はハウツー、マーケティング、ブランディングをはじめ、SEO対策など作為的な技術全般を指し、「蒸留」はその人が我を忘れて取り組んだ結果、生まれたものと言っていいだろう。
だとすれば、世の中のほとんどは「ひねり出す」ことばかりだ。新刊の広告で「アマゾン第1位」「発売後すぐに○刷」などという文言を見たら、大半はインチキだと考えていい。ごくまれに事実も混じっているが、大半は意図的に作られた結果だ。
チャンドラーはカッコいい生き方を知っていた。だから、作為的なまがい物を嫌っていた。
人生も蒸留によって生み出したいものだ。
(第61回 210718)
最新の書籍(電子書籍)
●『魂の伝承 アラン・シャペルの弟子たち』電子版で復刻
本サイトの髙久の連載記事