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紺碧の将

かの花の役割は

2011.08.19

 前回に続き、山の話題を。

 山は登るにしろ下るにしろ肉体的にはハードだが、視線はあちこちに釘付けとなり、結果的に疲れを癒してくれることになる。遠くの山並みを見ては、「すっげー、あれはもしかして高天の原かぁ」と声をあげたり、足下の高山植物を見ては、「かっわいいー! きれいー!」を連発することになる。つまり、私の目は望遠レンズになったり接写レンズになったり、じつに忙しく焦点を変えることとなる。

 ことに高山植物をまじまじと見たときの感動といったら……。残念ながらそれを正確に形容する術を私はもっていない。

 以前も書いたことがあるが、どうしてあれほど劣悪な環境の中、あんなにも可憐な花を咲かせることができるのか不思議でしかたがない。地面はゴツゴツとした岩ばかりだったり、夕方以降は寒風吹きすさぶ悪天候の連続だったり、なにしろ生育の条件は最悪に近い。わが身を守るためか、ほとんどのサイズは小さい。背丈もあまり伸びないものが多い。しかし、花は上品だ。毒々しいものはほとんどない。葉や花びらは肉厚なものが多いが、なかには透き通るように薄いものもある。ほとんど名前を知らないのが悔しくてならないが、ゼーゼーと息をはずませているとき、彼ら彼女らからもらうエネルギーはけっして少なくはない。

 高山植物は過酷な環境下、自らのことは顧みず、多くのものを他者に与えている。そう思えてしかたがないのだ。

(110819 第274回 写真は北岳の高山植物)

 

 

 

 

 

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