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紺碧の将

現代アートのときめき

2022.03.21

 仕事の拠点にしているところの近くにアーティゾン美術館(旧ブリジストン美術館)がある。そこで開催されている「はじまりから、いま」という収蔵品展はなかなか見応えがある。

 印象派や日本の近代洋画はたしかに見どころのひとつではあるが、「何度見てもいいなあ」とは思うものの、衝撃を受けるには至らない。あまりにも見慣れてしまっているからだ。

 そこへいくと、現代アートは未開拓の領域だ。玉石混交は他のジャンルと同じだが、時に心身を揺さぶられるほどの衝撃を受ける。

 今回は、ザオ・ウーキーという中国の美術家だ。9年前に亡くなっているが、いままで彼のことは知らなかった。こんなにすごい人なのに……。

 惹かれた理由のひとつは、書画の雰囲気を醸していることだ。中国の絵画は詩や小説と密接に結びついており、日本の美術にも大きな影響を与えた。掲出の作品『07.06.85』の青い絵の具を墨に置き換えれば、即座に書画となる。

 日本人の現代画家、白髪一雄氏の『白い扇』もよかった。こちらも、余白を活かす日本美術の伝統に根ざしていると思われる。この美術館は、ほぼ撮影オーケーのため、いろいろな角度から写し、あとでマチエールを確認できるのもいい。

 コロナウイルスの流行拡大の影響は美術界にも及んでいる。プラスの効果としては、予約制が定着したことだ。それまで、鳴り物入りの企画展は言うに及ばず、「これでもか!」というくらい大勢の人を入れ、ギューギュー詰めだった。人の肩越しに作品の一部を見ても、なんの感興もわかない。ただ疲れるために行くようなもので、ほとほと呆れていた。美術展とはいえ、あくまでも営利事業だから仕方がないとはいえ、どうにかしてほしいと思っていたら、コロナウイルスがそれをやってくれた。

 まったくもって、コロナウイルス君はあちこちに思わぬ効果を及ぼしている。

(220321 第1120回)

 

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