そのままでいいのだ伊吹山
其のまゝよ月もたのまじ伊吹山
芭蕉が『奥の細道』の最終地・大垣へ行く手前で詠んだ句。伊吹山とは関ヶ原の北部に位置し、日本百名山にも数えられる。
句意は、「山といえば月とセットというのが定番だが、伊吹山は月がなくてもすばらしい」。事実、大垣あたりで見る伊吹山は、周囲の山々を蹴散らし、自分がいちばん美しいと言わんばかりの偉容を湛えている。
今年3回目の登山は、この伊吹山である。
体のどこも悪くはないがあと何年生きられるかわからないし、もう3000メートル級の山はしんどい。山小屋にも泊まりたくない。できれば、2000メートル前後の山をゆっくり登りたい。そんな〝わがままな〟要望を満たす山は、案外国内にたくさんある。
伊吹山は、前々から行ってみたいと思っていた。信長が、ポルトガルの宣教師に広大な土地を与え、薬草園を作ったと知ったからである。その数、なんと3000種。伊吹山にヨーロッパ原産の植物が自生しているのは、そのためである。当時、薬草は戦の役に立った。毒にも薬にもなるという意味で。山頂の植生群落は、国の天然記念物に指定されている。
また、伊吹山は積雪量の世界記録を持つ。1927年、なんと12メートル弱もの積雪を記録したのだ。日本海と太平洋の気候がぶつかるところらしい。
岐阜というところは、さまざまな意味で要衝といえる。東西の中心に位置し、そのため、古戦場が多い。戦国時代に魅了されている私にとって、岐阜県はかなりおもしろい地である。
大垣市内から伊吹山の夕焼けを仰ぐ
頂上付近は瓦礫だらけ
頂上に日本武尊の像がある
頂上からの眺め。山々が織り成す絶景
琵琶湖も望める
トリカブトがあちこちに自生している
(221024 第1151回)
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