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紺碧の将

菅野式菜箸灸

2012.06.02

 首と肩が異様に凝ってしまい、痛みが続いていることは数回前の本欄で書いた。

 その後、整体や運動、温熱マッサージ、デトックスサプリなど、いろいろ試しているものの一向に成果は上がらず、いよいよ来週決行する断食に期待をする以外ないという状況に追い込まれている。本と音楽と携帯電話以外、何もないという環境のなかで内臓を休め、静かに回復を待つ。これが案外、正しい方法なのかもしれない。

 そんなことを思っているとき、菅野敬一さんから電話があった。私のブログを読み、私の窮状を知ったのだ。

 「薬事法の関係上、“これをすれば必ず治りますよ” とは言えないけど、僕が考案した施術を試してみますか」と言う。

 聞けば、菅野さんは現場仕事において、手や腕や肩の筋肉などを痛めることが少なくない。あるとき、鍼灸の治療に通い、鍼灸師のやり方を見て、独自の療法を思いついたという。

 「結局、あれは鍼を使って経穴(ツボ)を刺激し、血行を良くすることなんだよね。その理屈がわかれば、あとは自分でできるんじゃないかな、と思ったわけ」

 ちなみに、菅野さんは、タバコの火を使ってのお灸も考案し、自分の患部に試して効果を上げている。

 それを聞いて、いったい菅野さんはどんな方法を使うのだろうと疑問が湧いた。具体的なことを訊いても教えてくれず、「まあ、こんどやってあげるよ」と答えるばかり。

 じらし戦法でこられると、想像はいやがおうにも高まる。

 アクロバチックな姿勢、例えば逆さづりをされ、日本刀の先端で経穴を刺激されるのかなとか、野球のスパイクを履いて背中を踏みつけられるのかななど、怖い方へ怖い方へとイメージが膨らむ。

 いよいよ、「その日」がやってきた。

 「そこに腰掛けて」と言われ、素直に座る。すると、エアロコンセプトのカバンから一本の菜箸を取り出すではないか!

 「ちょっと先端を丸めたんだけど、これを使って痛いところを探していくからね」

 そう言うなり、菅野さんは、菜箸を使って丹念に痛点を探していく。「痛い!」と言うと、指で皮膚を熱くなるくらい擦る。その繰り返しで約1時間。

 「明日になると、痛い部分がもっとはっきりしてくると思うよ。今度はそこを重点的に攻めればいい」

 事実、翌日は痛い部分がはっきりわかるようになり、数日をおいて再び菅野菜箸灸師の施術を受けることになった。施術後はたしかに血行の流れが良くなり、症状が改善している。

 さっそく、その治療法を「菅野式菜箸灸」(英名:Suganotick Chopstick-Treatment)と名付けた。

 「“世界のスガノさん” をマッサージ師にしてしまうのは高久さんくらいですね」と友人から揶揄され、正直なところ、私も複雑な心境である。

 しかし、なんでもかんでも病院へ行けばいいというのではなく、それぞれが自分の健康状態を見極め、治療法を含めて自己管理していかなければいけない時期にきていることはたしか。今、健康保険収支は急激に悪化し、近い将来、保険料の大幅アップが避けられない。みんなが「共倒れ」になる前に、それぞれが手を打つべきなのだろうが、国の財政と同じで、自助努力による根本的解決法はないというのが私の見方だ。

 最後に……。

 「スガノさん、あなたは本当にファンタスティックな方です!」

(120602 第344回 写真は施術中の菅野菜箸灸師)

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