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紺碧の将

官能的なお尻

2012.08.04

 「新型ポルシェの発表会会場にエアロコンセプトの販売ブースが設けられるんだけど、そこに一日中いるから暇があったらおいでよ」と菅野さんから言われていたので、行ってきた。ウェスティンホテルの会場は、不景気とは思えないほど、多くの人でごったがえししていた。

 アルファロメオだけを愛する私にとって、ドイツ車の新型車発表会に出向くのは生まれて初めてのことだが、じつはアルファロメオ以外で興味をそそられるのは、ポルシェだけである。というか、今、アイデンティティーがしっかり保たれ、独自のデザイン性を維持しているのは、アルファロメオとポルシェだけだと思っている。

 これは個人的な好みになってしまうが、私はリアデザインの貧困な車は好きではない。お尻はグラマラスで官能的でなければいけないと思っている。それ以上に、インテリアデザインは重要だと考えている。要するに、個性的な芸術家と正しい郵便局員、どっちに会いたい? と言われ、正しい郵便局員とは答えないのと同じ理屈だ(郵便局員の皆さん、ごめんなさい。あくまでもイメージの話です)。

 以前、ドイツのカージャーナリストが、「日本車の特徴は、特徴がないことだ」と言っていた。当たっているだけに、反論もできなかった。それでも当時は、世界を席巻していたから良かった。しかし、いつまでも「壊れない、使いやすい」が特徴では、早晩、他国との競争に敗れてしまうにちがいない。

 そもそも、日本車のメーカーはデザイナーの名前を明かさないというのがおかしい。もしかすると、チームみんなでデザインしているのかもしれない。多くの人の協議によってデザインされたものがいいものになるはずがない。誰か突出した才能にリーダーシップを握らせることを避けているフシもある。日本的な風景だなと思う。なるほど、8社ものメーカーがひしめき、各社とも多くのラインナップを揃えているのに、ほとんど同じテイストなのは、そこに大きな理由があるのかもしれない。

 

 ところで、大昔とちがって、今は誰もが移動する。では、移動の手段は何か? ここにそれぞれの価値観が出ると思う。

 私は、宇都宮にいる時は愛車を頼りにする。地方では車がなければ、にっちもさっちもいかない。

 ある地点からある地点への移動ができればいいということであれば、正直、どんな車でもいいのだろうが、やはり私は移動時間を楽しみたい。乗っている車は、服装の延長でもある。というわけで、何に乗るかはずっとこだわってきた。

 東京にいる時は、鉄道か徒歩だ。タクシーは1年に1回くらいしか使わない。以前はほとんど歩く機会がなかったが、今は歩くのが好きで、4駅くらい平気だ。この前も飯田橋から千駄ヶ谷まで歩いたが、なんてことのない距離だった。それでロスした時間は、朝か夜に補えばいい。

 宇都宮から上京する場合、私の友人のほとんどは新幹線を利用するが、私はとことん在来線だ。その距離で新幹線を使うのは1年に1回もない。料金が高いということもあるが、新幹線は案外不便なのだ。特に、新宿近辺へのアクセスを考えると、新幹線に乗る意味がまったくない。

 今は交通手段も多種多様だが、そのうちエネルギー不足によって、手段が限られてくるだろう。ガソリンを使えるのはハレの時だけになるかもしれない。法外なペナルティーを支払ってガソリンを購入する時代が、もう目と鼻の先だと思う。

(120804 第358回 写真はポルシェ・ボクスター。官能的なお尻だ。黄色が似合うデザインができるのはイタリア車とポルシェだけ))

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