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税金を払いたくない人をこれ以上増やしてどうするのか

2024.12.28

 先の衆院選の比例代表で国民民主党に投票したことを悔いている。

 これまで「103万円の壁」とは、ある年収に達すると税金を引かれて手取りが減ると勘違いしていた。それは明らかな制度設計ミス、そこに目をつけたのはいいじゃないか。これだけ人手不足が深刻化しているのに、制度の影響で働き控えをするのは理不尽だと思い、国民民主党に投じた。「壁」という言葉に惑わされていたのだ。

 なんのことはない、103万円を超えると税金がかかるというだけの話で、手取りがそれまでより減るわけではない。要するに「びた一文、税金は払いたくない」というのが働き控えの原因だと知って、呆れてしまった。

 国民民主党の主張通りになれば、税金を払わない人が大幅に増える。これだけ至れり尽くせりの社会を築き上げて(それはそれで悪くはないと思うが)、いったいその原資はだれが負担するのだろう。

 かつてのサッチャー改革の狙いはいくつかあるが、行き過ぎた再分配を是正し、収入の低い人にも薄く税を負担してもらうことも盛り込まれた。課税最低限を下げたのだ。それまでのイギリスの税制は労働党によって懲罰的な累進課税がなされ、最高税率は96%。ビートルズの曲「タックスマン」に、「5%では少な過ぎると思っているのかね。全部とられないだけでも感謝しなさい」という歌詞がある。イギリス政府は「揺りかごから墓場まで」とう聞こえのいい言葉を用い、社会主義的な政策を遂行した。その結果、優秀な人は国外に移住し、「なるべく自分は税金を払いたくない。なんでもかんでも国に助けてもらいたい」と考える人ばかりが残った。その結果、「英国病」と揶揄されるような社会になった。つまり、国全体が貧しくなり、心もすさんだのだ。

 税金はだれしも好きではない。しかし、これだけ緻密で国民にやさしい制度を作り上げた以上、誰かがその原資を担わなければならない。「それは自分ではなく、他の人」という考え方が民主主義の足を引っ張るのは明らかだ。もちろん、なんらかの事情があって働きたくても働けない人は例外である。そういう人こそ、社会のセーフティーネットによって救う必要がある。

 

 103万円の壁などと言わず、「これだけ税金が必要なのだから、所得に応じて少しずつ負担しましょう」と国民を説得できる政治家はいないのか。政治家も国民の支持があってはじめてその地位につける。そういう意味では人気商売のひとつである。

 2023年の一人あたりのGDPが発表された。日本はついに韓国にも抜かれ、22位になった。G7では最下位、1位のルクセンブルクの約3分の1という凋落ぶりを呈した。円安の影響もあるが、それよりも最大の要因は国力の低下であろう。これだけ多くの国民が納税を忌避して働こうとしないのだから、こうなるのは当たり前。このまま国力低下が進めばさらに円の価値は下落し、輸入物価は上がる。食料とエネルギーを外国に依存している国として、これでいいのだろうか。

 昨日、国の一般会計予算(約115兆円)が閣議決定された。過去最高である。税金を払いたくない人をどんどん増やしながら、これほど巨額の予算を組む。いったいその負担はだれがするのだろう?

(241228 第1252回)

 

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