あっぱれ! フランス
トランプ大統領が世界を振り回している。このまま報復関税の嵐が世界中に吹き荒れれば、得をするのは中国だということもわからずに。アメリカに弾かれた国々は中国に輸出したいだろうし、中国から物を買うだろう。結局、目先の損得を最優先にすれば、真逆の結果を生むことになる。NATOの拡大を阻止したくてウクライナに侵攻したロシアだが、戦争の決着がつく前にフィンランドとスウェーデンがNATOに加盟した。プーチンは人間のなんたるかがまるでわかっていない。
トランプの乱痴気騒ぎに対して、各国はさまざまな反応を示しているが、あっぱれなのはフランスである。マクロン大統領は、トランプが相互関税のリストを発表した翌日、「アメリカ経済とアメリカ人は以前よりも弱体化し、貧困化するだろう」と述べ、ヨーロッパの企業を集めた会合で、アメリカへの投資を停止するよう要請した。
「アメリカがわれわれを攻撃しているさなかに、欧州の大企業がアメリカに数十億ユーロを投資すれば、どんなメッセージを送ることになるのか」と。アメリカ側の今後の対応が明確になるまで、「いかなる手段も排除しない」とも述べている。
なんとあっぱれな対応だろう。元来、フランス人は独立自尊を旨とし、他人に隷属することを嫌う国民性がある。ときに、それが傲慢さに裏返ることもあるが、ここまでトランプに強気の姿勢をとれるのは、民主主義陣営ではフランスだけだろう。マクロン氏の発言ではないが、「自由の女神を返せ。あなたがたに自由の女神を有する資格はない」と言い放った政府関係者もいた。
いったいどうして、そんな強硬な態度がとれるのか。その理由を考えてみるに、
・国連の安全保障理事国のメンバーである(拒否権がある)
・核兵器を有している
・エネルギーは原子力発電を主としている(原油の輸入量が少ない)
・食料自給率が約125%もある(国民が飢えない)
以上の4項目はわが国にはないものばかりだ(原発推進策は、事故によって頓挫)。
さらに加えて、国民の多くが質素な生活をしていることも挙げられるだろう。とにかくフランスには便利なものが少ない。私がフランスに行っていた頃(2000年代初頭)、旧市街(全20区)にコンビニやスーパーの類はほとんどなかったし、いまはどうかわからないがアマゾンの参入を阻止していた。それによって、個人経営の書店がたくさんあった。また、世界一、観光収入があることも強気に出られる一因といえる。
アメリカの貿易赤字は、アメリカ人の生活態度にも一因がある。物を買いすぎるのだ(日本人は本来、シンプルな生活が馴染むはずだが、残念ながら戦後はアメリカを追従している)。
トランプは、アメリカは再び偉大な国になり尊敬されるだろうと語ったが、いまのところ、軽蔑する人はいても尊敬する人はいない。
今後、株価がどんなに下落しようが、物価高になろうが、失業者が増えようが、トランプは改心しないだろう。すべて前政権に責任を押し付けるはずだ。狭い情報空間に閉じ込もり、周りはイエスマンばかりだから、耳の痛い情報はあがってこないだろう。
今、思うのは、ヤケクソになって核ミサイルの発射ボタンを押さないでほしいということ。晩年の秀吉と同じで、なにをしでかすかわからないからね、あの人は。
(250406 第1266回 写真は、トランプの発言を手で制するマクロン大統領)
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