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紺碧の将

殺伐とした食卓

2013.01.13

ベイビーサプリ ダイナースクラブカード会員向けの会報誌『SIGNATURE』がなかなか面白い。

 巻頭の伊集院静による「旅先でこころに残った言葉」は、毎回しみじみと唸らされるし、毎号の特集記事も悪くない。誌面のレイアウトも上品だ。

 先日、まとめて処分する前にペラペラとページを繰っていたとき、興味深い記事を見つけた。2012年4月号、にしむらじゅんこ氏の連載「三つ子の〝胃袋〟も、百まで」に書かれていたアメリカのベビーサプリ事情。

 記事によれば、アメリカの母親の大半は、離乳食を作ったことがないという。その代わり、脳を活性化させる、いわゆるブレイン・フーズというサプリを与えるらしい。どういうものかといえば、オメガ3脂肪酸やドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸など。

 アメリカに生まれた子は可哀想だ。生まれてすぐにサプリ漬けにされるのだから。もちろん、母親も父親ももサプリ漬けだ。

 結局、目的は「効率よく頭のいい子どもを育てる」ということらしい。

 しかし、情緒はどうなのだろう。情緒が食事と深い関係にあることは自明の理であるのに……。いよいよ、人間の赤ちゃんも機械扱いされるようになってしまった感がある。

 サプリメントについては、『Japanist』第15号で紹介した河名秀郎氏が主張しているように、自然界にある野菜や果物から、ある特定の栄養分だけを抽出しても、体はそれを栄養とは見なさず、場合によっては肝臓や腎臓に負担をかけるだけだという。つまり、自然界にあるときは、さまざまな関係性によっての栄養素であり、その栄養素だけを取りだしても、自然界での関係性が失われている以上、本来の役割を果たさないということなのだ。

 なるほど、サプリをたくさん飲んでいる人で健康そうに見える人に会ったことがないという話も頷ける。サプリを飲んでいることで、〝なんとなく良くなっている〟と思い込んでいるだけなのではないのか。

 今まで、日本人はさまざまな面でアメリカの後追いをしてきた。が、これだけは真似をしないでほしい。赤ちゃんはサイボーグではない。まして、親のペットでもない。

 私は今までに4度、アメリカ本土を旅したことがあるが、かつてフランス領だったルイジアナ州以外、食べ物はさんざんだった。ルイジアナ州は中米にも近いので、ガンボスープなど、その地域の影響を受けている料理がある。しかし、その他の大半は(つまり、もともとイギリス人が支配していた地域)は大味で大雑把。やたらと量だけが多く、全部食べ切れたことは一度もなかった。

 アメリカには素晴らしい文化がいくつもあると思うが、こと食文化に限っていえば、最低のレベルだと思う。ハンバーガーとフライドポテトを生んだ国だからね。私も年に2、3度はハンバーガーを食べるので、すべてが悪いと言うつもりはないが……(中にはかなり美味しいハンバーガーもある)。

 豊かな食文化をもつ日本人が真似をする必要は微塵もない。だから、賢明なお母さんは、けっして真似をしないようにね。

(130113 第394回 写真は、『SIGNATURE』の記事に掲載された写真)

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