多樂スパイス
HOME > Chinoma > ブログ【多樂スパイス】 > 奇人・変人の時代

ADVERTISING

私たちについて
紺碧の将

奇人・変人の時代

2013.07.08

森・土・海は〜 最近、変人が多くなったなあとつくづく思う。「変人」と書くと、「変わった人」と受け取られるかもしれないが、それはあくまでも現代の常識に照らし合わせて、ということであり、本質的には変人でもなんでもなく、むしろ「まっとうな人」である。

 特に食や医療の分野での「変人」が多くなった。

 すでに『Japanist』でご紹介した真弓定夫医師。薬も出さず注射も打たず、〝医者は正しいことをしていれば患者が減り、収入も減る〟と公言する。今月発売される18号から連載のインタビュー記事が始まる。ちなみに、もうひとつの連載インタビュー記事はエアロコンセプトの菅野敬一さん。こちらも、「変人」と言ってさしつかえないだろう。

 「食べない健康法」の石原結實医師もご紹介したことがある。1年前、私は異常な肩こりに悩まされていたが、彼の食事法を実践したら、今は快適そのものである。

 〝医者にかかると殺される〟と唱える近藤誠医師の本が大ヒットし、医療業界は騒然としているだろう。また、今読んでいる『医学不要論』を書いた、若干39歳の精神科医・内海聡医師も過激に面白い。現代の医療の9割は不要なものであると主張し、政官財で金儲けに明け暮れる「イガクムラ」の実態を暴いている。彼は『精神科は今日も、やりたい放題』という本の著者でもある。

 〝食は本なり、体は末なり、心はまたその末なり〟という食養を唱えた明治の軍医・石塚左玄の系譜に連なる若杉友子さんは京都郊外で自給自足の食養を実践をしておられるが、彼女の著書も面白い。

 

 さて、過日、東京農大で開催された『森・土・海は食のゆりかご命のゆりかご』というイベントに参加した。『奇跡のリンゴ』でお馴染みの木村秋則さん、『森は海の恋人』の著書で知られ、カキ生産者であるにもかかわらず上流に木を植え続けている畠山重篤さん、完全放牧で酪農を営む中洞正さんのそれぞれ講演と3人のディスカッションである。

 木村さんは有名だから省くとして、畠山さんの識見と行動力に感心した。嬉しいのは、〝海と森が互いに活かし合っている、だから漁業に従事する自分たちは森を再生する〟という考え方が世界で評価され、国連の「フォレスト・ヒーローズ」に選ばれたこと。

 鉄がいかに重要かという自説の解説も説得力があったし、ユーモアにもあふれていた。

 中洞さんは、かなりとんがったお人。シンポジウムの後の懇親会で、木村さんと畠山さんの前には人の行列ができていたが、中洞さんはまったくフリー状態。でも、中洞さんのアクの強い主張ははっきり言って私好み。若いヤツらを育て、世の中に向かって強いメッセージを発信している。まるで政治家のように。

 彼が言っていた「政治にも業界団体にも改革は期待できない。意識のある消費者と意識のある生産者が結びつき、そこから変えていく以外にない」という主旨は賛同できる。結局、政権与党に改革はできない。なぜなら、業界団体(=既得権益者)に支持されて政治の権力を握っているのだから。既得権益との関係が薄いのは日本維新の会と日本共産党だろうが、前者は橋下さんの失言問題(実際にはまったく失言ではないのだがメディアによって意図的に発言の一部を切り取られ、主旨が変わってしまった)によって支持率が急落してしまった。日本共産党はもともと日本を弱体化させ、社会の転覆を謀る勢力だから論外。みんなの党も既得権益者たちとのつながりは少ないと思うが、まだまだ少数派。つまり、今回の参院選が終わっても改革はなかなか進まないということだ。

 話は戻るが、それぞれ独自の生き方を貫いているお三方が味わった艱難辛苦は想像以上だろう。この国はいいところがたくさんあるが、〝独自の生き方〟を許容しない風土がある。村八分にされ、回覧板が回ってこなくなっても、孤独になっても自分の信念を貫く。その先にしか現代の奇人・変人には生きる途がない。

 しかし、そういうやり方を貫徹し、独自の地歩を築いた彼らのような存在が、これから多くのフォロワーを生むにちがいない。だって、〝世の常識〟通りに生きても幸せにはなれないし、病気になるということは今の社会が証明しているのだから。

 (130708 第437回 写真は、ポスターのイメージ部)

【記事一覧に戻る】

ADVERTISING

メンターとしての中国古典(電子書籍)

Recommend Contents

このページのトップへ