柔らの道の23号
なにをしても気持ちのいい季節だ。仕事をしても本を読んでも運動をしても食事をしても……。年々、自分が行うひとつひとつに歓びが増しているというところに歳を重ねる意味があると思う。
夏以降、運動量を増やしている。おかげで長年維持してきた体重が約3キロ落ち、体調はこの十数年で最もいい。それが「なにをしても気持ちいい」につながっているのかもしれない。
新しい『Japanist』が仕上がった。例によって、それまでさんざん校正をしているので、仕上がったものをまじまじと見ることはないが、またひとつ号を重ねられたことに満足している。
今号の巻頭対談のゲストは、柔道家の山下泰裕さん。1984年のロサンゼルスオリンピックの金メダリストで国民栄誉賞を受賞されている。世界選手権3連覇、全日本選手権9連覇、対外国人選手生涯無敗、85年の引退時まで203連勝など、永遠に破られないのではないかと思う。
山下さんの魅力は、伝統を守りながら新しいものを取り入れる柔軟な発想と行動力。特にブルー柔道着導入の是非に関する意見には感服した。「不易流行」「水急不流月」とはこういうことなのかと思う。
「日本の学び舎」ではお二人を紹介している。一人は、柔道を通じて「平成の寺子屋」たる塾を開講した坂東真夕子さん、もう一人は要介護のお年寄りに学ぶ楽しみを教える「おとなの学校」を運営する大浦敬子さん。
坂東さんはオリンピックを目指していたが、山下さんとはちがう道を歩まざるをえなかった。どんなに努力しても、誰もが夢を実現できるわけではないのだ。しかし、その後が重要だ。それまで培ったものを活かして、どう生きるのか。坂東さんはやはり柔道を選んだ。そこに至る道が清々しい。
大浦さんの取り組みから、人生の晩年期に必要なことが何か透けて見える気がする。つまり、人間は最期に至るまで学びが必要であり、また、学びこそが最良の歓びを与えてくれるということ。彼女は独自の発想で、そのことを体現している。
「ジャパニストの美術散歩」では、ダウン症の書家・金澤翔子さんを取り上げた。
人と比べることもなく、数字に踊らされることもなく、天真爛漫に生きる彼女は、まさに悟りをひらいた禅僧のよう。彼女の母親である金澤泰子さんがまた素敵だ。
「Leader of Japan」では、なでしこアクションの山本優美子さんを紹介。朝日新聞の誤報によって「日本人は性的奴隷を虐げた民族」という虚像が世界に蔓延してしまったが、その誤解を解くべく「普通の主婦」が世界を舞台に活動を続けている。その活動には、ただただ頭が下がる思いだ。
また、山田宏氏(次世代の党幹事長)に聞く、「私が目指す、日本の姿」他、
新しい連載記事が3本スタートした。もちろん、内海隆一郎先生の短編や藤原万耶さんのエッセイ、拙者の「葉っぱは見えるが、根っこは見えない」も連載中。
興味のある方は本サイトよりご購入ください。
(141025 第528回 写真上は『Japanist』23号の表紙、下は山下泰裕氏と中田宏氏の対談記事の扉)