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紺碧の将

お月さまの話

2015.01.13

三日月 月の動きが気になるようになった。

 きっかけは知人から教えられた『木とつきあう智恵』(エルヴィン・トーマ著)を読んだことだ。オーストリア人の著者は木材の製材業を営んでいるが、新月の日に伐採した木で造った家は火事にもならず、虫もつかず、長持ちするという。
 木材にもいい影響を及ぼすのであれば、当然ながら人間にもそうだろう。考えてみれば、潮の満ち引きにはじまり、女性の周期など、月の影響力は大きい。臓器に付く肉月片は、臓器が月に影響を受けているという意味でもあるということもわかった。それまで満月や半月(上弦・下弦)、三日月などを見て、風情があっていいなあと思っていた程度だったが、月の思わぬ力を知ってしまったのだ。
 わが国は推古天皇の時代、604年から太陰暦を採用しているが、明治6年、改暦して太陽暦に替わってから月の満ち欠けとカレンダーが一致しなくなってしまったが、太陰暦も頭に入れながら生活をすると、意外な発見もある。
 さて、新月への興味を抱き始めてから、新月の夜はマンションの屋上に上がって、月の光を浴びている。光といっても、新月はいっさい見えない。だから、感じるだけ。ペットの海も連れていくのだが、わけがわからずオドオドしている。
 月の運行や太陰暦などに詳しい知人から、意外な事実を告げられた。
「高久さんが生まれたのは新月の日ですよ」
 新月の日は太陽、月、地球が一直線に並ぶ。地球から見て、太陽と月は同じ方向にあるため、その両方の引力で引っ張られるが、一方で太陽の外を回っているので遠心力で外に対しても引っ張られる。それが潮の満ち引きにも関係するのだが、要するに、太陽と月の両方から大きなエネルギーを受ける日ともいえる。
 以前、『Japanist』で連載している「葉っぱは見えるが、根っこは見えない」に、私は顕在意識と潜在意識が一致しているから心が楽だろうとある人から指摘されたことを書いたが、ここでも納得したわけである。
 とはいえ、新月の日に生まれたからといって、さほど珍しいこととはいえない。約28分の1の確率なのだから。
 私は太陽暦では4月8日生まれの牡羊座だが、太陰暦でも同じ牡羊座だという。これも顕在意識と潜在意識の一致につながっているのかもしれない。
 さらに! 人間の成長を計る春夏秋冬サイクルで見ると、どうやら私は真夏生まれらしい。真夏生まれの人間は生命力と活力に溢れ、人がまわりに集まってきて、イノシシのように猪突猛進するのだという。
 猛暑もあまりつらくない反面、寒いのが苦手というのは、そういう背景もあるのかもしれない。そういえば、私は亥年生まれだった。これじゃあ、動かずにいられないわけだ。そういう人間が禅に興味を抱いたのは、防衛本能によるものかもしれない。長所は短所とウラオモテなので、それに応じた欠点もあるのだが、総じて今の自分そのものだと思う。
 だからなに? という声も聞こえてきそうだが、人は生まれた瞬間に天体の影響を受け、生命力や性格を決定づけられるという。同じ場所で同じ両親から生まれた兄弟でも、性格がまったく異なるというケースは少なくないが、そのことも生まれた瞬間の宇宙の状態が異なると考えれば納得できる。だとすれば、自分が生まれた瞬間の天体の姿を知ることは無駄ではあるまい。それを「サイン」とみなし、さまざまに活用できるからだ。
 昨年和歌山で知った水を愛飲しているが、その名は「月のしずく」。月の引力は水に対しても多大な影響を及ぼしているのだろう。
(150113 第539回)

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