本質を形に。『Japanist』26号、完成
また季節が4分の1進んで、新しい『Japanist』が仕上がる。
今号の表紙は藤間久子さんの写真。深閑とした森の、苔生した石段に生えるドクダミの風情がなんともいえない。
ドクダミは名前で損をしている。「ドク」を含んでいるので悪いイメージがあるが、白い花は清楚で美しい。私は花もあの匂いも大好きだ。
今回も本誌は「本質」がいっぱい詰まっていると自負している。1,500円という定価は他の雑誌と比べれば明らかに高いが、これだけ本質が詰まってこの価格は安すぎる、と自画自賛?
今回の「日ノ本の清談」は、広島市信用組合理事長の山本明弘氏と『Takenoko』や『Soji』でおなじみ、広島にある株式会社マルコシ創業者の木原伸雄氏。
山本さんは「融資はロマンじゃ!」と言って「預金と融資」だけに特化した経営方針を長年続けている。「融資の可否は3日以内に決める」「人物を見て融資する」という、普通の金融機関ではありえない方法で多くの中小零細企業を支えてきた。金融業の本来のあり方を根源的に模索した人だからできること。対談中、「金を追うな、人を追え!」などの名言がたくさん飛び出してきたのが印象的だった。
巻頭対談のゲストは、「てのしわとしわをあわせてしあわせ」で有名な、お仏壇の「はせがわ」相談役長谷川裕一氏。長谷川氏は、日本人が本来持っている「敬い」「感謝」「おかげさま」の精神が、いずれ世の中の基本になるときがくると語る。その精神を取り戻そうとお仏壇の普及をはじめ、仏教の伝承にも力を注いでいる。
安保法案がようやく衆院を通過した。日本にとって死活問題とも言える安全保障に関し、対案も用意していない野党のていたらくには呆れるばかりだが、長谷川氏は「日本の諸悪の根源は現憲法」と言い切る。
「ジャパニストの美術散歩」は、からくり人形技師の半屋弘蔵氏。室町時代に発展し、江戸時代に花開いた「からくり」は、東洋から渡来した技術を日本の職人たちが応用して日本ならではの和時計を完成させたことから、後に「からくり人形」などの玩具が生まれた。他の伝統技術職人同様、からくり人形の技術を継承する技術者は、半屋さんを含め、今では日本に数人しかいないという。技術大国の神話が崩れかけている日本に、半屋さんはその技術をもって警鐘を鳴らし続けている。
「じぶん創造物語」は、大田区にある町工場の女社長、細田純代さん。細田さんは、計測器を製造する会社の三代目。父から譲り受けた会社を守るため、東洋思想哲学を学び、経営に生かしながら事業を革新している。細田さんが学んだ経営哲学とは?
連載記事にもいくつかオススメがある。安倍総理の米国議会での演説に言及した近藤隆雄氏の原稿は、現代の国際政治学において、最上級の部類に入るのではないかと思う。
もちろん、私メの「葉っぱは見えるが、根っこは見えない」も継続中。今回は時事問題について書いた。
つくづく思う。60年安保の時とおんなじだ、と。あの時も、デモに参加している人たちは、どのような法案かを知ろうともせず、ただ反対していた。日本に対する防衛義務をもたなかったアメリカに対し、双務性を認めさせた画期的な交渉の結果だったが、なんと多くの日本国民は反対したのだ。岸信介は呆れたと思う。それでも命の危険を賭して条約を締結したからこそ、いまの日本がある。
今回も同じ現象だ。一部の反日組織が内容をねじ曲げて「戦争法案」だとのろしを上げる。あまり考えていない人たちが同調し、反対のコールが大きくなる。
いいかげんにしないと、笑いごとでは済まされない。
(150719 第566回)