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紺碧の将

美を創る人々

2015.10.28

4Cシルバー 「ニッポンの伝統工芸に出遭う」というイベントが青山や外苑近辺で行われている。エリアから少しはずれるが、松濤のフィアット&アルファロメオショールームで山中漆器とのコラボレーションがあったので出向いた。

 よくある赤塗りの漆器ではなく、工芸デザイナーを用いてつくった作品がいくつも並んで、それはそれで見応えはあったのだが、私の目はやはりアルファロメオに向いてしまった。
 4C(写真)。従来のアルファロメオのイメージといくぶん異なる。どちらかといえば、アルファロメオといえば「一般公道を走れるふつうのクルマ然としていながら、超個性的なクルマ」というイメージだと私は勝手に思っているが、4Cははなからスポーツカー然としている。従来、絶妙にまぶされていた〝日常感覚〟がほとんど払拭されている。そういう意味では、マセラティに近づいているモデルだとも言える。目の保養にはなったが、もちろん購入するわけではない。むしろ、来年か再来年に発表される予定(お店の人談)のスパイダーに期待したい。
 ところで、きわめて私的な話題だが、娘の就活にようやくピリオドが打たれた。働き始めるのは来年4月だから、初給料は4月下旬あたりだろうが、にもかかわらず、本人はもらった給料で何を買おうかと今から皮算用している。捕らぬタヌキの〜とならないことを祈るばかりだが、そこで娘が呟いた言葉にハッとした。
4C白 「欲しい物って、イタリア製ばかり。どうしてイタリア製って、みんなこんなにかっこいいのかな」
 プラダ、フェラガモ、ドルチェ&ガッバーナ、ブルガリ……。たしかにそう言われてみれば、イタリアもんは独特の存在感を放っている。
 そういう感懐は私も抱いていたのでフムフムとうなずいてしまった。車はその先鋒だし、サッカーナショナルチームのユニフォームなんかもイタリアのそれはダントツにかっこいい。
 ある人がこう言った。「地球上の人間には2種類ある。イタリア人とそれ以外と」と。美を創ることにかけ、イタリア人はなんらかの天賦の才を与えられていることは間違いないだろう。
 以前、ミラノで見た光景を思い出した。通りの向こうから70歳前後とおぼしきご婦人が颯爽と歩いてきたのだ。全身黒づくめに真っ赤なストールを粋にまとっている。〝年齢相応〟という感覚はもちあわせていないようだ。それくらいだから、背筋もシャキッと伸びている。

 アルファロメオに乗った若い警察官が車を降りるや、ドアミラーで髪型を整えている光景を見たこともある。アルファロメオの本社はミラノにあるので、パトカーももちろんアルファロメオなのだ。日本なら、さしずめ地味なオジサンが地味な風貌で生真面目に降りるところだろう。どっちがかっこいいと訊かれたら、「あっち」と答えてしまいそう。
 しかし、かっこいいのはわかったが、では他のことはどうなんだ? と疑問を抱く人も多いだろうが、これは言うまでもない。その他のことにかけては(料理と歌うことを除き)、どうしてこんなに……と呆れることが多い。人間とは摩訶不思議な生き物なのだ。
 ずいぶんとりとめのない話になってしまったが、民族性というのはいかんともしがたいものがあるようだ。われわれ日本人も、そういう意味では人後に落ちない。いい面と劣っている面が明らかにある。そういうことを自覚することも必要なのだろう。
(151028 第590回)

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