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紺碧の将

街路樹の涙

2016.06.18

道路工事 事務所のある宇都宮へ行くたび、哀しい思いをする。見慣れた風景が一変してしまったからだ。栃木県総合運動公園と環状線(通称・宮環)の沿道にあった街路樹が数百本も伐採されてしまった。

 県の説明によれば、サッカー場を建設するのにともなって渋滞が予想され、そのために周辺の道路を整備しているのだという。
 世の中の施策は、どんなものにも理由がつけられる。まして、役人はもっともらしい理由をでっちあげる天才だ。それを聞いても納得することはできなかった。その近辺が渋滞したことなどほとんどないし、仮に渋滞になったとしても、一方通行にするなどの工夫をすれば、ある程度は防ぐことができる。
 サッカーの試合が行われるのは1年にどれくらいあるのだろう。そもそも栃木県にあるプロサッカーチームはJ3に低迷している状態であり、「渋滞が予想される」というのは、あまりにも現実味のない「危惧」ではないか。

 

街路樹伐採 素晴らしい桜並木、トチノキ並木だった。猛暑の日でも樹冠の天蓋が太陽光を遮り、心地いい陰を落としていた。
 税金で植え、税金でメンテナンスをしていた木を税金で伐採し、税金で道路を造っている。その結果、風景は殺伐とし、日陰もなくなっている。どう贔屓目に見ても「良いこと」のために税金を使っているとは思えない。
 あらためて思う。こういうことを考えた誰かがいて、それを議会で通すための策略を練り、誰かが実行し、それによって誰かが潤ったのだろうと。彼らにとって、法律的に瑕疵がなければ問題ではない。
 写真上は、1周1キロのジョギングコースに隣接した道路だが、3列もの並木道がすべて切り倒されている。以前の風景と比べたら、明らかに殺伐としてしまった。ジョギングコースに盛った土手には以前、桜並木があったが、いったい何をしたいのかわからない工事である。
 写真下は環状線沿いの風景だが、以前は歩道の両側に並木があり、歩道の左にある駐車場は見渡せなかった。しかし、今はご覧の通り、なんにも遮るものがない。いったい、なにをしたいのかがわからない工事だ。
 もう少し先へ行くと、車道が広げられているが、街路樹を伐採してできたスペースを広げただけで、車線が増えたわけでもなんでもない。いったい、なにをしたいのか、さっぱりわからない。
 ほんとうにひどいもんである。
 東京の友人はこう言った。
「そういうことをする人たちは、全員絞め殺してやりたいですね」
 実際に絞め殺すことはできないが、同感である。
 少なくとも、誰がこういうことを考え、誰が実行しているのかを後世に残す必要はあるだろう。
(160618 第644回)

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