ビルの屋上の林
東京はコンクリートジャングルと言われるが、無計画に開発されてしまった地方都市よりずっと緑がある。私の行動エリアだけなのかもしれないが、〝神人共作〟と呼ぶ以外にないような巨木があちこちにある。
先日、GINZA SIXの屋上へ行って驚いた。なんと公園になっているのだ。さまざまな樹木が植えられ、ベンチが配置されている。多くの人が寛いでいた。
おそらくクレーンを使って屋上まで上げたのだろうが、本来、商業ビルになくても誰も文句を言わないことに巨額の費用と大きな労力を割くところがいい。平らなコンクリートに水が張ってあり、その上を子供たちが駆け回っている姿もあった。
外周は通路になっていて、ベンチに腰かけて銀座の街並みを眺めることもできる(写真下)。カフェがあったらもっと素敵だと思う。
私はモーパッサンのファンだが、彼はエッフェル塔が嫌いで、その姿を見なくても済むよう、毎日のようにエッフェル塔に上り、カフェやレストランに入り浸っていたという。ま、エッフェル塔が嫌いというのはポーズだったのだろう。あるいは「嫌も嫌よも好きのうち」だったかも。モーパッサンのような気分を味わうには、やはりカフェがほしい。しかも、とびきり旨いコーヒーを提供してくれるカフェが。
10年も過ぎたら、この屋上の林も鬱蒼とするだろう。鳥も集まってくるにちがいない。
人間が手を施せば施すほど、自然と逆行するというのはもはや定理だが、そのことをわきまえた上で緑を大切にしたいと殊勝なことを考える髙久であった。
(170627 第732回 写真はGINZA SIXの屋上)