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紺碧の将

若い世代のアナログ回帰

2017.08.08

 若い世代がアナログに関心をもっているようだ。

 例えば、レコードと将棋。

 レコードは衰退の一途をたどっていたが、近年、売上が急増している。購入している人の多くは若い世代らしい。カセットテープも人気が復活しているが、こちらは熟年世代が中心。

 なぜ、若者がレコードを?

 デジタル社会の反動だと思う。デジタルはクリアだが、無機的。人間味がない、味わいがない。人間の可聴領域をカットしていることにも原因があると思うが、「耳」だけで聴かせようとしている。対するレコードは可聴領域外の音も含まれ、「体」全体に訴えていると感じる。少し面倒だが、その手間もなかなかいいし、聴いてみると音もいい。ジャケットも大きくてアートっぽくて美しい。そんな理由ではないか。

 この欄でも取り上げたが、私は小学生の頃からレコードを買い始め、「3度のメシを1食抜いてもレコードが欲しい」と思った人間である。もちろん、CDも買い集めたが、それぞれに良さがあると思う。車の中や歩行しながらレコードを聴くことはできない。

 ダウンロードして聴くことはない。やり方がわからないというのもあるが、やはり音源を形として持っていたい。

 もうひとつ、驚いたのが将棋人気だ。藤井四段の活躍が火を付けたのだろうが、自宅の近くにある将棋会館には中学生や高校生がごった返ししている。対戦相手を求め、他流試合で研鑽しているのだ。

 その近くにある鳩森神社には将棋塚があるが、ここにお参りする人も少なくない。

 将棋といえば、小学生の頃、めっぽう強い同級生がいた。彼はひらがなを読むのもたどたどしかったほどだが、将棋だけは強かった。とくだん強くもない私は、何度やっても勝てなかった。それなのに、彼は先生からも同級生からも「デキの悪い子」と思われていた。たまたま学校の勉強が合っていなかっただけで、地頭(じあたま)は良かったのだ。思えば、その頃から日本の教育が画一的になっていったのだと思う。

 

 若い人たちのアナログ回帰(もともとデジタル世代なので「回帰」ではない?)は嬉しい現象だ。生き物としての自然な反応なのだろう。喩えが悪いかもしれないが、ずっとカプセルに入った宇宙食を食べていた人が、ふとオフクロの味を思い出させる食事に戻ったというような感じか。

 たしかにデジタルは便利だし、手間がない。私もパソコンがなかったら、仕事にならない。昔のように、版下を作る作業などやれるものではない。

 だからこそ、仕事から離れたときは、電子機器には触れたくない。

 これは生き物である自分が無意識に選んでいる行動なのだろう。

(170808 第742回 写真上は将棋会館。下は鳩森神社の将棋塚)

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