芳賀一葉展で時を遡る
人間て面白いね。どうしてこうもオモシロイ生き物を神様は創造したんだろう。いろいろなヤツがいる。優秀な人、おバカな人、大らかな人、セコイ人、かっこいい人、不細工な人、親切な人、イジワルな人……カテゴリー別に分けたら枚挙にいとまない。
何が好きか、というテーマで人を分類してもオモシロイ。雪の結晶だけを研究する人、虫だけを研究する人、泳ぐ人、走る人、山に登る人、絵を描くだけの人、人を助ける人、人を殺める人…これも枚挙にいとまない。
ふ〜〜〜〜。
『fooga』5月号特集で紹介した芳賀一洋氏もかなりオモシロキ人だ。いったいどういう能力が授けられ、どういう拍子に自分の才能に気づいたのだろう。
今、芳賀氏の個展が宇都宮市の「ギャラリー悠日」で開かれている。
右の写真がそれ。精巧なミニチュアで時間を遡る芳賀氏の作品に、大谷石の蔵はとても良く似合っている。一つひとつを見れば、まぎれもなく入魂の作品にはちがいないのだが、こうやって全体を眺めると、さらに作品の力が増している。
『fooga』を読んでいただければわかるが、芳賀氏はおよそ50歳の頃、ブティックのオーナーからこの世界に転じた。ルソーが税官吏から画家に転じたのもそれくらいの歳。意外にも、男の転機となる歳かもしれない(ちなみに高久も50歳)。
それにしても、ここまで極めるとは、いかにモノづくりのDNAがセットされている日本人と言えど、驚きである。CFで使われた「ニコレットの居酒屋」など、入口の覗き窓から見ると、タイムスリップしたかのような錯覚に陥った。壁の節穴を通して隣の部屋を覗いているような、望遠鏡を通して、対岸にある居酒屋の様子を覗いているような……。
「フィクションをノンフィクションに見せなくてはいけない」
芳賀氏の言葉だが、言うはやすし、行うは難し。べらぼうな衝撃である。
(090525 第100回)