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紺碧の将

クレーマーが多い社会

2018.11.24

 毎年この季節になると、嫌な思いをする。日本人がどんどん劣化している様を見せつけられるからだ。

 事務所のある外堀り通り沿いの街路樹が早くも剪定されてしまった。右の写真を見比べれば一目瞭然だが、まだまだ葉が青々と生い茂り、これら葉が黄色く変わり、やがて落ちていく(上が伐られた直後、下はまだ伐られていない木)。それを眺められるこその街路樹だろう。

 さっそく新宿区に電話をすると、その管轄は東京都だという。都の所管の課に電話をすると、〝担当者〟は外出していて、帰ってから電話をするという。担当者以外なにひとつわからない? そんなバカなことがあるのか。

 夕方、担当者から電話があった。私が詳細を言う前に、いきなり謝り始める。聞けば、自分も今日現場へ行ったが、「伐り過ぎている」と。

 私は「伐り過ぎているという問題ではなく、なぜこの時期に伐るのか」と問うた。まだまだ葉が生い茂っており、これでは生き物虐待ではないか、と。

 もしかすると、担当者も少しは心があるのかもしれない。いろいろ話すうち、本音が出てきた。

「現場からの意見がありまして」

「現場というのはなんですか。業者から早く伐らせてほしいと言ってくるのですか」

「そんなことはいっさいありません」と強く否定する。

 案の定だった。

「落ち葉が汚いから枝を剪定しないのなら、おまえのところで毎日落ち葉掃除をしろと言われるのです」

 やれやれ、またクレーマーか。

「一部の人の意見を聞いていたら、きりがないでしょう。そういう人を説得するのも役所の責任なんじゃないですか」

 もちろん、役所の担当者に責任はない。決定したのは、もっと上の立場の人だろう。なんだかカフカの『城』を読んでいるような虚無感を味わった。

 

 いったい、いつからこういう日本人が増えてしまったのだろう。「落ち葉が汚いから枝を伐れ」「子供の声がうるさいから幼稚園はつくるな」……そんな、信じられないことを言い、我を通そうとする。外堀通り沿いに民家はほとんどないのだから、クレームをつけているのは商店主か。ひどい話である。

 くだんの担当者に言った。「こういうことをしていて、日本人として恥ずかしくならないですか」と。世の中には、街路樹を数百本も根本から伐ってしまうところもあるのだから、剪定の時期くらいで目くじらたてる必要はないのかもしれない。しかし、こういうことが当たり前の社会になったことに強烈な危惧を覚える。そんなに落ち葉が嫌なら、プラスチックの街路樹にする以外ないだろう。

 外国人をとやかく言う前に、まずは日本人の品位を上げる必要があるのではないだろうか。

 

「美し人」

美の生活化―美しいものを人生のパートナーに

 

※悩めるニンゲンたちに、名ネコ・うーにゃん先生が禅の手ほどきをする「うーにゃん先生流マインドフルネス」連載中。第32話は「褒め言葉は%0%に、苦言は150%に」。

https://qiwacocoro.xsrv.jp/archives/category/%E9%80%A3%E8%BC%89/zengo

(181124 第859回)

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