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紺碧の将

磐梯山で得た宝もの

2019.09.13

 磐越道のトンネルを抜けると、右手に磐梯山が現れた。いつ見ても雄大だが、いく本ものスキー場が巨大な傷跡のようで、不憫でもある。

 懐かしい感懐だ。子供がまだ小さかった頃、たびたび家族で裏磐梯にある贔屓のホテルを訪れ、そこを拠点にして周囲の観光を楽しんだ。どこに行っても、視界の片隅に磐梯山が映っていた。

 磐梯山にはふたつの顔がある。猪苗代湖あたりから見る表磐梯は穏やかだが、裏側のいわゆる裏磐梯は荒々しい山容である。1888年、大爆発を起し、斜面が吹き飛んだのだ。そのとき、熔岩と火山灰が川を堰き止め、桧原湖や秋元湖、五色沼など数百もの湖沼ができた。それが130年もの時を経て、現在のような得も言われぬ絶景となっている。自然の造形力は、超一流のデザイナーが束になってもかなわない。

 そんな磐梯山に初めて登った。

 毎年9月の登山は、楽なコースを選んでいる。今回も6つある登山コースのうち、最も楽な八方台からのコースを選んだ。「クマ出没注意」の看板があちこちにあり、クマと遭遇した場合の説得方法を考えながらブナ林を15分ほど歩くと、20年ほど前まで温泉旅館として営業していた「中の湯」の廃墟がある。近くの水たまりからグツグツと硫黄が発生している。

 それから徐々に勾配がきつくなり、頂上に近づくにつれ、噴火のときにできた荒々しい裂け目が眼前に広がる。磐梯山はいまだ活火山。8月に登った焼岳もそうだが、火山が本気で爆発したら、どこに逃げてもおシャカだろう。運が悪かったとあきらめる以外にない。

 磐梯山がほかの山と異なるところは、ほぼ頂上まで樹木があり、直射日光を避けられることだ。山に登る前の週は雨の予報だったが、いつも私が山に登るときは快晴になる。昨年も、台風直撃のはずが、いきなりコースが変わり晴天になった。なぜか私は天に愛されている(と思っている)。日頃の行いがいいからだろう(だれも言ってくれないから自分で言う)。

 標高1816メートルの頂上から四方八方を眺める。南側には雄大な猪苗代湖が、反対側には桧原湖や秋元湖など裏磐梯のめくるめく絶景が連なっている。極上の眺めである。

 ♪あいづばんだいさんは〜、宝のやまよぉ〜

 という歌があった。残念ながら宝を拾うことはできなかったが、脳裏に宝のような絶景が刻まれた。

 値千金である。

 

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