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紺碧の将

物語が生まれる場

2019.12.14

 前回、古い建物のことを書いたから、今回は新しい建築物の話を。

 来年開催される東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる国立競技場が完成した。建築家はご存知、隈研吾氏。地上5階、地下2階、建築面積は旧競技場の約2倍、6万人収容の巨大なスタジアムである。

 なにが素晴らしいかって、軒ひさしに使われた木材が、全国47都道府県から調達されたということ。各地方の代表が集まった威風がある。周囲の植栽は高中樹が約1000本、低木が約4万6000本と、神宮外苑にふさわしい「杜のスタジアム」となった。インド人が設計した当初案よりはるかに品格がある。さっそく来年元日のサッカー天皇杯決勝戦に使用される。その後もここを舞台にさまざまな物語が編まれることだろう。

 

 残念なことがあった。競技場の周囲の道路に敷設された真新しい街灯のポールに、「迷い犬を探しています」という手作りのチラシが多数、ガムテープで貼られていたのだ。ペットを失った哀しみはわかる。私もいまだにうーにゃんを失った哀しみが癒えない。

 しかし、国民共有の財産にガムテープで〝私ごと〟のチラシを貼るとは不届き千万。やむなくジョギングしながらすべて剥がしたのだが、ガムテープの糊がこびりついて取れないところもある。公共の財産に個人の張り紙をするというのは軽犯罪ではないのだろうか。

 しばしば思うのだが、どうでもいいことに目くじらをたてる一方、重要なことを見逃す風潮がある。

「そんなことを言うが、おまえは重要なこととどうでもいいことの区別ができるのか」と怒る御仁もいるにちがいない。

 両者には明確な境界線がないが、それを見分けようという意識を持って生きていることは事実。それを磨こうと、日々アンテナを研ぎ澄ませている。

 

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