多樂スパイス
HOME > Chinoma > ブログ【多樂スパイス】 > 顔出し看板の謎

ADVERTISING

私たちについて
紺碧の将

顔出し看板の謎

2020.01.23

 いつごろからだろう。自分の顔を大写しにした看板が出現し始めたのは。

 首都高を走っているとき、ビルの屋上に設置された大きな看板に自分の顔を大きく写した広告を見たときの驚きは忘れられない。世の中にこんな恥知らずの人がいるのか! とのけぞった。

 そのうち、雨後のタケノコのようにあちこちに出現した。事務所のある宇都宮でも見かける。背景を黄色や(あろうことか)どピンクに染め、薄笑いをしている人の看板が。ほどなくして気がついた。揃いも揃って歯科矯正クリニックか美容整形外科なのだ。

 ははぁ〜んと直感が走った。もしや経営コンサルタントか経営セミナーのしわざではあるまいかと。

 創業してから数年後のことを思い出す。自己啓発セミナーに参加したときのことを。もちろん、私がそういう類のところに自発的に行くわけがない。当時のお得意さん(クライアント)からの強引な要望で参加しないわけにはいかなくなったのだ(取引先からの要求を断れないということをうまく利用している)。

 泣く泣く参加した。東陽町あたりの会場だったと記憶している。260人以上参加していた。

 3泊の泊まり込み研修だが、初日から面食らった。会場が真っ暗になり、中島みゆきの曲が流れたのだ。その後、二人一組になって自分の〝過去〟と人に言えぬ思いを相手に伝える。やがて大勢の人が感極まり、会場は嗚咽(おえつ)の渦になった。あのときの「気持ち悪さ」をなんと表現すればいいのだろう。

 その自己啓発セミナー、システムがじつにうまくできている。ステップが上がるにつれ、多くの人を紹介しなければいけない。しまいには自分が教える立場になる。つまり、営業マンとトレーナーを受講者にさせるという仕組みだ。新興宗教も真っ青というその会社(名前はあえて出さないが)はまだ健在だ。あの研修によってなんらかのプラスになった人もいるとは思うが、大半はすぐ元に戻ってしまう。一種のショック療法だから当然のこと。弊社も社員何人か分の受講料(100万以上)を払っただけで終わった。数ヶ月も過ぎると、そういうセミナーに参加したことさえ忘れるような類のものだった。

 

 と、そんな記憶が蘇り、おそらくそのようなセミナーで洗脳された人が同じようなことをしているのではないかと思ったのだ。

 案の定、友人が「あれは○○総研がやっているんです」と教えてくれた。よく名の知られた経営コンサルタント会社である。創業者の理念とはまったくちがうことをやっている。彼はそのあと、「クズですよ」と言葉を結んだ。

 経営の根本を教えるのならともかく、あんな方法で公共の景観を汚すことを指導する。そんなものは経営コンサルタントでもなんでもない。

 日本中、ゴミ溜めのようなおぞましい景観ばかりになってしまった。しばしばBS放送でヨーロッパの街並みを歩くといった番組をやっているが、同じ地球上の街なのに、どうしてこうも異なる風景なのか。雲泥の差に絶句する。それをますます助長する〝経営指導〟、なんとかならないものか。

 

本サイトの髙久の連載記事

◆ネコが若い女性に禅を指南 「うーにゃん先生の心のマッサージ」

◆「死ぬまでに読むべき300冊の本」

◆「偉大な日本人列伝」

 

髙久の近作

●『葉っぱは見えるが根っこは見えない』

●『父発、娘行き』

 

お薦めの記事

●「美し人」最新記事 書家・齋藤翠恵さん

●「美しい日本のことば」

(200123 第964回)

【記事一覧に戻る】

ADVERTISING

メンターとしての中国古典(電子書籍)

Recommend Contents

このページのトップへ