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紺碧の将

大相撲の国際化

2020.02.20

 生まれて初めてナマで大相撲を見た。とはいっても、トーナメント戦である。場所の合間にある興行のひとつで、負ければ敗退の一発勝負形式だからそれなりに面白い。同部屋対決もありえる。実際、白鵬と炎鵬という、まるではじめから仕組んだような取り組みがあった。しかも、あろうことか、炎鵬が白鵬の足を取って有利な体勢に持ち込み、白鵬を土俵の上に投げて転がした。会場がやんやの喝采で溢れたのは言うまでもない。

 私は床に座るというのが苦手で、枡席を避け、椅子席を陣取った。椅子席は土俵から遠い。しかし、それでも立ち会いの目にも留まらぬスピードと迫力は伝わってくる。どうしてあんなに太っているのに動きが俊敏でしなやかなのか、わけがわからない。もちろん、パワーはとんでもないレベルだ。

 会場を見渡すと、ヨーロッパ人やアメリカ人など白人が目についた。どうやら相撲は白人の心をくすぐるようだ。

 そういえば、以前、『Japanist』の対談で山下泰裕氏を取材したとき、柔道と相撲の国際化のちがいが話題になった。柔道はオリンピックに採用されたことで一気に世界に広がった、世界に出ていった国際化。一方、相撲は世界を日本に引っ張り込んだ国際化だと中田宏氏が指摘した。慧眼だと思った。

 柔道は世界に出ていったがためにルールがコロコロと変わり、当初の理念が失われつつある。しかし、大相撲はあくまでも日本のルール、しかも神事としての決まりごとを頑なに守っている。いまだに女性が土俵にあがれないという、性差別と受け取られかねない決まりごとも変えていない。もっとも、あれは差別でもなんでもない。神事にのっとっているのだから。内館牧子氏がそのことをある著書で指摘したこともあるが、薄っぺらな人権主義者が物事の本質もわからず、騒ぎ立てるのはいかにも浅はかだ。

 もうひとつ感じたことは、昔は相撲の道に進む人は大半が中卒だったが、今は大学卒の力士が多いということ。先場所優勝した徳勝龍や朝乃山などを育てた近畿大の監督など、名指導者が大学にもたくさんいるのだろう。

 相撲は国際化によって、しばらく外国人の天下だったが、これからは日本の若い力士が台頭するだろう。そういう予感が心地良い。

 

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